JAXA、「アルテミス世代」の宇宙飛行士候補2人を発表

このエントリーをはてなブックマークに追加
月面探査プログラム「アルテミス計画」を見据えて宇宙飛行士を募集していたJAXAは、2月28日、諏訪理さんと米田あゆさんを宇宙飛行士候補として選出したことを発表した。

【2023年2月28日 JAXA

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2021年11月に宇宙飛行士の募集を開始し、2022年4月から候補者の選抜を重ねてきた。前回募集(2008年)の4倍以上で過去最高となる4127名の応募者から選ばれたのは、世界銀行で防災専門官を務める諏訪理(すわまこと)さん(46歳)と医師の米田あゆ(よねだあゆ)さん(28歳)。2月28日に行われた記者会見で、2人が喜びや意気込みなどを語った。

会見の様子
会見の様子(提供:星ナビ編集部、以下同)

ルワンダで教壇にも立った諏訪さん、次世代に夢を与えたい

諏訪さんは1977年東京都生まれ。選抜時の年齢は46歳と、過去最年長だった油井亀美也さん(当時39歳)を上回る。米・プリンストン大学大学院で地球科学を学んだ後、青年海外協力隊の隊員としてルワンダで教壇に立っている。2010年からは国連の世界気象機関に勤務し、2014年に世界銀行に入行、現在は上級防災専門官を務めている。

仕事の関係で米・ワシントンからリモートで記者会見に参加した諏訪さんは、前回の宇宙飛行士候補選抜にも挑戦していた(一次試験で不合格)ことを明かした。今回、選出の結果を聞いたときには大きな責任を負うことになると思い、気持ちが高ぶって眠れなかったという。

かつて茨城県つくば市に暮らしていた諏訪さんは、つくば万博やJAXA筑波宇宙センターを通じて科学や宇宙に触れる機会があった。高校生のときには、日本人としてスペースシャトルに初めて搭乗した毛利衛さんの地球帰還報告会に参加している。その際、「宇宙へ行った人のきらきらした言葉」に魅力を感じ、以来、宇宙飛行士になれたらと思い続けてきた。途上国に携わる国際開発というバックグラウンドを持つ初の候補として、自身が毛利さんからモチベーションをもらったように、次世代に夢を与えられる宇宙飛行士になりたいという。

子供たちの友達のような、気さくな宇宙飛行士になりたい米田さん

米田さんは1995年東京都生まれ。現役最年少の宇宙飛行士候補となった。2019年に東京大学医学部を卒業したあと、東大附属病院、日赤医療センターでの勤務を経て、昨年10月から虎の門病院に派遣されている。

米田さんは、喜びと驚きで合格を受け止めると同時に、責任を感じて身が引き締まる思いと、様々な人への感謝の念が沸き起こったと話している。宇宙飛行士は小さなころからの夢で、お父様からプレゼントされた日本人女性初の宇宙飛行士・向井千秋さんの伝記がきっかけだったとそうだ。より多くの人が宇宙へ行く時代が来るのを感じてからは、自身の医師としてのキャリアを宇宙開発で生かせるのではないかと考えるようになった。

宇宙飛行士としての活動では、宇宙環境が人体に及ぼす影響を知るための実験や検査に携わり、その知見を世界中の医療へ還元したいと話す。一方で、友達のような宇宙飛行士として子供たちからの質問に気さくに答えるなど、夢や希望を与えて宇宙への興味につなげたいという希望も持っている。

最年少の日本人宇宙飛行士候補であると同時に、向井さんと山崎直子さんに続く3人目の女性日本人宇宙飛行士候補となった米田さんは、性別や年齢を意識せずに一候補として頑張っていきたいとも語った。

諏訪さんと米田さんは今年4月1日にJAXAに入社し、基礎訓練を行いながら、国際宇宙ステーション(ISS)や宇宙探査などに関する知識や技量を修得する。それら訓練結果の評価によってJAXA宇宙飛行士に認定される見込みだ。

米田さん、諏訪さん
リモート会見の画面越しに握手する米田さん(左)と諏訪さん

今回の選抜と今後の選抜

JAXAの記者会見では、「とても優秀な人たちから応募があり、誰がなってもおかしくないという状況の中、総合的な判断から2人を選んだ」というコメントもあった。JAXA理事長の山川宏さんは、今後は5年おきに宇宙飛行士候補を募集を実施していく意向を示した。今後募集する宇宙飛行士に求める重要な資質として、チームの仲間としてうまくやっていくという従来の項目に加えて、柔軟性を挙げた。専門性を持ちながらも一般の人々にとって親しみやすい存在として、様々なことに柔軟に対応できる感覚を持った人に宇宙飛行士になってもらうことで、宇宙開発をより身近なものにしたいという。

JAXAは宇宙飛行士を募集するにあたって、これからの宇宙飛行士を「アルテミス世代」と呼び、月面探査プログラム「アルテミス計画」とのつながりを強調していた。諏訪さん、米田さんが正式な宇宙飛行士となれば、ISSだけでなく、NASAが主導する月周回有人拠点「ゲートウェイ」や月面での活動などに参画することとなる。

録画「JAXA宇宙飛行士候補者選抜の結果に関する記者会見」(提供:JAXA YouTubeチャンネル)

※星ナビ5月号(4月5日発売)で会見レポートなどを掲載予定です。