NASA、アルテミス計画の着陸候補地を発表

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半世紀ぶりの有人月面探査となるNASAの「アルテミス計画」の着陸候補地が発表された。いずれも月面の南極近くで氷の水など資源の豊富な領域にある。

【2022年8月25日 NASA

NASAは、アポロ計画以来半世紀ぶりに有人月面探査を行う「アルテミス計画」を進めている。計画では2025年打ち上げの「アルテミスIII」で宇宙飛行士を月面に送る予定だが、その着陸地点の候補13か所が発表された。

着陸候補地は全て月面の南極付近にある。この領域のクレーターには常に太陽光から遮られている永久影があり、水の氷など重要な資源が得られる見込みだ。「いくつかの候補地は、月面上で最古の部類に入る領域にあります。永久影もあるので、未調査の月物質を通じて月の歴史に関する新たな知見を得るチャンスです」(NASA惑星科学部門 Artemis月科学リーダー Sarah Nobleさん)。

■ 着陸候補地

  • Faustini Rim A ファウスティーニ・クレーターの縁
  • Peak Near Shackleton シャックルトン・クレーター付近の山
  • Connecting Ridge シャックルトン・クレーターとデヘルラヘ・クレーターを結ぶ尾根
  • Connecting Ridge Extension シャックルトン・クレーターとデヘルラヘ・クレーターを結ぶ尾根の続き
  • de Gerlache Rim 1 デヘルラヘ・クレーターの縁 1
  • de Gerlache Rim 2 デヘルラヘ・クレーターの縁 2
  • de Gerlache-Kocher Massif デヘルラヘ・コッヘル山
  • Haworth ハワース・クレーター
  • Malapert Massif マラパート山
  • Leibnitz Beta Plateau ライプニッツβ高原
  • Nobile Rim 1 ノビレ・クレーターの縁 1
  • Nobile Rim 2 ノビレ・クレーターの縁 2
  • Amundsen Rim アムンゼン・クレーターの縁

着陸候補地
着陸候補地。全ての候補地は月の南極から緯度6度以内(南緯84度以南)に位置する。各領域の大きさは約15×15km。画像クリックで拡大表示(提供:NASA)

月の南極付近から候補地を選ぶにあたっては、2009年に打ち上げられたNASAの月周回探査機「ルナー・リコナサンス・オービター(LRO)」の観測データをはじめ、過去数十年間の研究成果が活用された。打ち上げ可能期間に加えて、地形の傾き、地上との通信、日照条件などから安全に着陸できるかが考慮されている。

また、アルテミスIIIが有意義な科学探査を行えることも重要な条件だ。そのため永久影に十分近いことが求められるが、一方で6日半の滞在中は常に太陽光に当たっていることも必須である。太陽光は電力源となり、温度変化を最小限に抑えることができるため、月面での長期滞在には欠かせない。「太陽系の探査計画を立てるということは、科学的観点から(対象天体の)本来の状態を維持しつつ、利用可能な資源をどう使うかを学ぶということです。月の水の氷は科学的観点からも貴重ですが、生命維持装置や燃料のための酸素と水素を抽出できることから、資源としても価値があります」(NASAチーフ・エクスプロレーション・サイエンティスト Jacob Bleacherさん)。

13か所の着陸候補地の紹介動画「Artemis III Landing Region Candidates」(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)

今後NASAでは、より広い科学技術コミュニティと会議やワークショップを通じて13の地点について議論し、それぞれの利点について意見を求めていく。そのフィードバックは、将来の着陸地点の選定に反映されるほか、候補地点の追加につながる可能性もあるという。また、SpaceX社と協力して宇宙船の着陸能力を確認し、それに応じた選択肢の評価も継続して進められる。

NASAは今月29日(日本時間)にアルテミス計画の第一弾ミッション「Artemis I」として、大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」で無人宇宙船「オリオン(オライオン)」を打ち上げ、月までの試験飛行を実施する予定だ。その後2024年に有人宇宙船による月周回を行い、翌2025年に有人月面探査の予定となっている。