明るい超新星2022hrsが見ごろ
【2022年5月2日 高橋進さん】
超新星2022hrs(SN 2022hrs)は4月16日に、山形県の板垣公一さんが口径0.5mの天体望遠鏡にCCDを取り付けておとめ座の銀河NGC 4647を撮影した画像より発見された超新星です。発見の5時間後にイタリア超新星探索プロジェクト(italiansupernovae.org)の口径0.2m望遠鏡に取り付けたFOSC-ES32分光器により低解像度のスペクトルが撮られ、このスペクトルから超新星2022hrsが極大のおよそ2週間前のIa型超新星であることがわかりました。
発見3日後の超新星2022hrs(撮影:tokuさん。画像クリックで天体写真ギャラリーのページへ)
超新星は大質量星の重力崩壊によって生じるII型やIb型、Ic型と、今回の超新星2022hrsのように近接連星系で生じるIa型があります。Ia型のモデルのうち近接連星系を構成するのが白色矮星と主系列星の場合は、主系列星から白色矮星に向かって質量流入が起こります。白色矮星は重力を電子縮退圧で支えていますが、支えることができるのは白色矮星の質量が太陽質量の1.38倍(チャンドラセカール限界質量)までです。この限界を超えると電子縮退圧では重力を支えることができなくなり、超新星爆発が起こるのです。
Ia型超新星の仕組み(白色矮星同士の連星系というモデルもある)
超新星2022hrsは発見時の15等からじわじわと明るくなっていき、2週間後の4月末ごろにはおよそ12.5等の極大光度に達したとみられます。これは今年これまでに出現した超新星の中では最も明るいものです。今後はゆっくりと暗くなっていくものと思われますが、当面は(超新星としては)見やすい状態が続きますので、ぜひ撮影、観測にチャレンジしてみてください。
超新星2022hrsの光度曲線(Latest Supernovaeウェブページのデータから高橋さん作成)
超新星2022hrsが出現した銀河NGC 4647はおとめ座銀河団の中にある11.3等の渦巻銀河で、すぐそばに大きな9.8等の楕円銀河のM60があります。画像で見ていると接触しているようにも見える2つの銀河ですが、実際には距離が600万光年も離れており、NGC 4647はおとめ座銀河団の端のほうにある銀河です。
〈関連リンク〉
- 板垣公一さんのウェブサイト「Supernova」
- 国立天文台:日本人が発見した超新星一覧
- Latest Supernovae
- アストロアーツ 天体写真ギャラリー:新星・超新星・突発天体
関連記事
- 2023/08/23 明るい重力崩壊型超新星の周りは、元素も豊富か
- 2023/05/22 板垣さん、回転花火銀河に明るい超新星を発見
- 2023/05/18 時間差で現れた超新星の重力レンズ像でハッブル定数を測定
- 2023/03/06 超新星の電波再増光が示す連星進化の道筋
- 2023/01/30 2022年度日本天文学会各賞の受賞者発表 板垣さん、山本さんら
- 2023/01/16 奥野さん、ペルセウス座の銀河に自身初の超新星発見
- 2023/01/10 板垣さん、ろ座の銀河に超新星発見
- 2023/01/05 板垣さん、ペガスス座の銀河に超新星発見、2022年の7個目
- 2022/12/15 常識をくつがえすハイブリッド型のガンマ線バースト
- 2022/12/02 板垣さん、かみのけ座の銀河に超新星発見、今年6個目
- 2022/11/14 重力レンズで時間差観測、115億光年彼方の超新星
- 2022/10/19 板垣さん、しし座の銀河に超新星発見、今年5個目
- 2022/10/17 板垣さん、おおぐま座の銀河に超新星発見、今年4個目
- 2022/04/18 板垣さん、おとめ座の銀河に超新星発見、今年3個目
- 2022/03/22 板垣さん、しし座の銀河に超新星発見、今年2個目
- 2022/03/01 2021年度日本天文学会各賞の受賞者発表 彗星発見の西村さんら
- 2022/01/28 板垣さん、ろ座の銀河に超新星発見
- 2022/01/24 爆発前にまいた物質で急増光する超新星
- 2022/01/19 1400万年前の複数の超新星爆発で形成、太陽系を包む1000光年の泡
- 2022/01/12 超新星爆発直前の星に起こった変化を初めて検出