「もうすぐ星が生まれる場所」を含む電波地図が完成

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野辺山45m電波望遠鏡による観測から、オリオン座大星雲内にある「もうすぐ星の生まれる場所」を含む電波地図が作成された。

【2021年12月20日 国立天文台 野辺山宇宙電波観測所

宇宙空間において分子ガスが集まっている部分は分子雲と呼ばれ、そのなかでも特に濃い部分は「分子雲コア」と呼ばれる。分子雲コアは恒星が誕生する現場であり、恒星や惑星の進化を調べるうえで重要な天体だ。

こうした分子雲コアがどの程度成長しているのかを知る指標として、重水素(通常の水素よりも重い元素)が用いられる。分子雲が成長すると、通常の水素に対する重水素の割合が大きくなっていくのだが、ひとたび星が誕生すると割合が急に小さくなることが、これまでの研究からわかってきている。重水素の割合が最大になるのは星の誕生時ということになる。

野辺山宇宙電波観測所の立松健一さんたちの研究チームはこの性質に着目し、野辺山45m電波望遠鏡でオリオン座大星雲の付近を観測して星が生まれそうな現場を特定し、昨年「もうすぐ星の生まれる場所」のカタログを発表した。

立松さんたちは今回、それらの近辺を含む「電波地図」を完成させ、オリオン座大星雲の西側にあるフィラメント状の分子雲に、もうすぐ(数十万年程度で)星が生まれそうな場所が2か所あることなどを突き止めた。

「もうすぐ星が生まれそうな場所」の電波地図
(上)冬の大三角。中央のやや右上がオリオン座。(左下)上坂浩光さん撮影のオリオン座大星雲。(右下)野辺山45m電波望遠鏡で取得した電波地図の一つ。青い十字が「もうすぐ星が生まれそうな場所」(提供:リリースページより)

また、研究チームは、分子雲コアの乱流の大きさを精密に測定し、分子雲コアで星形成が始まるきっかけを調べた。星の誕生は安定した分子雲コアが何らかの原因で不安定になることで起こると考えられているが、不安定になる原因として、内部の乱流が減少することによるるという「乱流(さざ波)減衰モデル」と、外部からのガスの流れによるという「体重増加モデル」という2つの有力なモデルがある。今回の結果からは乱流モデルの証拠は得られず、体重増加モデルが有力である可能性がある。

重水素を指標とする観測は、星の誕生の現場を探り出す重要なツールだ。今後さらに観測を進めることで、 分子雲コアから原始星(赤ちゃん星)に至るプロセスの解明が進むことが期待される。

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