イオの大気の半分近くは火山由来

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火山活動があることで知られる木星の衛星イオをアルマ望遠鏡が電波で観測した結果、二酸化硫黄を主成分とする薄い大気の30~50%は火山から供給されていると見積もられた。

【2020年10月29日 アルマ望遠鏡

木星の衛星イオは、太陽系の衛星の中で最も火山活動が活発な天体だ。イオの大きさは地球の3分の1ほどだが、表面には400以上の活火山が見つかっており、そこからは硫黄を含むガスが放出されている。イオの表面に見られる黄や赤などの鮮やかな模様は、そのガスが凍りついてできたものだ。

イオには地球の10億分の1ほどというごく薄い大気が存在する。大気の主成分が火山活動に由来する二酸化硫黄であることは知られているが、これが直接火山から噴き出したものか、あるいは地表に降り積もって凍りついた物質が太陽光に温められて昇華して大気に混じるのかはわかっていなかった。

米・カリフォルニア大学バークレー校のImke de Paterさんたちの研究チームはこの謎を解くため、イオが太陽光を浴びているときと木星の影に入って暗くなったときの大気の変化を、アルマ望遠鏡による電波観測で調べた。「イオが木星の影の中に入っているときは、太陽光が当たらないので非常に低温になり、二酸化硫黄はイオの表面に氷となって蓄積します。この間、大気中に見られるのは火山から直接供給された二酸化硫黄だけです。つまり、この観測から、大気成分がどれくらい火山活動から直接の影響を受けているかを調べることができるのです」(米・コロンビア大学 Statia Luszcz-Cookさん)。

アルマ望遠鏡の高い解像度と感度により、研究チームはイオの火山から吹き上がる二酸化硫黄と一酸化硫黄のガスをはっきりととらえることに初めて成功した。この観測結果をもとにすると、イオの大気の30~50%が火山から直接供給されていると見積もられるという。

二酸化硫黄の広がりを示したイオの擬似カラー画像
アルマ望遠鏡が電波で観測したイオの二酸化硫黄の広がり(黄色)。イオの表面画像は、探査機ボイジャー1号とガリレオが撮影。背景の木星の画像は探査機「カッシーニ」が撮影(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. de Pater et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello; NASA/JPL/Space Science Institute)

さらに、火山から噴出する第3のガス「塩化カリウム」も検出された。「二酸化硫黄や一酸化硫黄が検出されない場所で塩化カリウムが検出されました。火山が異なるとその下のマグマの組成も異なることを示す、強い証拠です」(Luszcz-Cookさん)。

イオでは木星や他の衛星からの影響を受けて内部に非常に大きな摩擦熱が発生しており、これが火山活動のエネルギー源となっている。イオの大気と火山活動を調べることは、火山そのものだけでなく、潮汐加熱のプロセスやイオの内部についての理解にもつながる。研究チームでは今後、イオの下層大気の観測も行い、さらに謎を解明したいと考えている。

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