【レポート】日食ツアー:チリ・エルモジェの皆既日食とアルマ望遠鏡訪問
【2019年7月8日 星ナビ編集部】
すでに各地から報告が入っているように、7月3日(日本時間、現地は2日)の皆既日食はどこも快晴に恵まれました。アストロアーツ/星ナビ協賛ツアーは、チリに3コース、アルゼンチンに1コースが遠征しました。アルゼンチンのピスマンタでの様子は「【レポート】日食ツアー:アルゼンチン・ピスマンタより」で紹介しています。
チリのラ・セレナから内陸に約25kmのエルモジェに陣取ったのはクラブツーリズムの6日間と11日間のコース。皆既食滞内にあるホテルで居ながらの観測です。
(1枚目)快晴の中、黄道方向に伸びた太陽活動極小期のコロナを観測することができた。JPEG撮って出しの未処理暫定画像(撮影:窪田光(アストロアーツ))/(2枚目)地平高度約13度と低空での皆既だったので、観測者とともに日食情景を狙った(撮影:川口雅也(星ナビ編集部))。それぞれ画像クリックで表示拡大
今回の皆既日食は午後に太陽が北西の空に傾いてから部分食が始まり、皆既食となったのは現地時刻の4時40分ごろ。宿泊したホテルの中庭で観測したので、ホテルのレストランで昼食を食べてから機材の準備を始めることができました。皆既後12分で、部分食のままの太陽が山の稜線に隠れてしまいましたが、野外の観測地にバスで移動して機材のセッティングを行うことに比べるとストレスの少ない観測スタイルです。皆既食後はホテルのスタッフが用意してくれたシャンパンで祝杯をあげてからゆっくりと撤収です。
エルモジェのホテルの中庭でゆったりと日食を楽しみました。PCや望遠鏡駆動用にAC電源を使うこともできます。西向きの部屋ではベランダから日食を観測することができました。それぞれ画像クリックで表示拡大(撮影:川口雅也、以下同)
チリ11日間のコースには日食の後にもう一つのイベントが用意されていました。アルマ望遠鏡の見学です。ラ・セレナからいったんチリの首都サンチャゴに戻って、アルマ望遠鏡訪問のベースとなる標高2,500mのサンペデロ・デ・アタカマに向かいます。ここで高度順化のために1泊し、皆既から2日後にアルマ望遠鏡山麓施設に向かいます。国立天文台チリ観測所の阪本さん、アルマ広報の平松さん・宮田さんが出迎えてくれました。山麓施設は標高3,000mほどで、ここで健康チェックと山頂施設見学時の注意事項の説明を受けます。
そしてついにやってきましたアルマ望遠鏡山頂施設。標高5,000mの高地にあるので気圧は560hPa(平地の55%)しかありません。酸素ボンベを背負っての見学です。気温は0度ほどですが、風がないのでそれほど寒くはありませんでした。
(1枚目)山麓施設にあるコントロールルームを見学。電波なので昼間でも観測をしています。解説をしていただいたのは、国立天文台チリ観測所の石井さん。原始惑星系円盤も、ブラックホールシャドウもここから観測されたと思うと、にわかにリアリティが増します。(2枚目)山頂施設に同行していただいたのは平松さんと宮田さん。山麓施設のデータ処理センターや機器のメンテナンス工房も案内していただきました。
山頂施設に同行していただいた平松さんによると、チリ皆既日食前後の「アルマ望遠鏡特別公開」には世界中から900名が訪れるとのことですが、日本からはアストロアーツ/星ナビ協賛のの2コース約30名のみです。天文関係者や取材報道のための山頂施設公開はこれまでも何度か行われています。しかし、民間の一般観光ツアー(皆既日食が普通の観光ツアーかどうかはともかく)への公開は今回が初めての試みとのこと(山麓施設の見学は土/日曜に合同アルマ観測所によって催行されています)。
「今後も山頂施設の公開を行うかどうかは全く白紙ですが、今回は重要な実例になりました」(平松さん)。「アルマ望遠鏡への道」が再び開かれ、より多くの天文ファンが訪問できるようになることを願いたいものです。
「星ナビ」ツイッター@Hoshinaviでも日食とアルマ望遠鏡訪問をレポートしています。
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