デジタルカメラの普及やSNSの広がりもあって、天体写真を楽しもうという人が増えてきました。でも天体写真は普通の写真と違ってむずかしいのでは? と考えている人も多いでしょう。

確かに天体写真はむずかしかったのです。でも、それはもう昔の話。デジタル時代の今、便利なツールを使えば驚くほど簡単に天体写真の撮影が楽しめます。

ここでは、天体写真を手軽に、そして上手に撮るための近道を紹介しましょう。

ステラショットで
“らくらく”セッティング

最近のほとんどの天体望遠鏡は、見たい星を自動的に探してくれます。しかし、「自動的に」とは言ってもまだまだ「極軸合わせ」や「アライメント」といった面倒な準備が必要で、思った以上に時間がかかってしまうもの。

ここで登場するのがPC用のソフト「ステラショット」。大まかな望遠鏡の準備作業だけしておけば、あとはステラショットにおまかせ。試しに撮ってみた星空に、どのあたりの星が写っているかをPCが自動的に調べてくれるので、あとは実際に見たい天体を正確に真ん中に導入することができます。

たとえば、自宅のベランダからは南の空しか見えないので望遠鏡の初期設定が難しい、という時でも、ステラショットの導入補正機能を使えば簡単に導入ができるのです。

天体望遠鏡の「アライメント」について

見たい天体を正確に導入するためには、あらかじめ望遠鏡の向きを調整して、星空のどの方向を見ているかを望遠鏡に正しく設定する必要があります。この作業が「アライメント」です。

アライメントの手順は望遠鏡によって異なりますが、通常は基準としていくつかの星を実際に導入し、中心を合わせていく作業になります。一つ一つ手動で行っていく必要があるため、手間のかかる作業です。

ステラショットの導入補正機能

ステラショットを使えば精密なアライメントは不要です。ステラショットは実際に撮影された写真から星の配置を検出し、ソフトウェアに搭載されている星のデータと照らし合わせて望遠鏡の向きを認識し、ずれを補正してくれます。

特定の基準星を使用せず、星表データ内で利用可能なものを使うため、ある程度の星が写る空であれば、一回の導入補正で正確に位置を合わせることができます。

ユーザーの操作は、試し撮りのために撮影ボタンを押すことと、補正のために導入補正ボタンを押すことの二つだけです。たったこれだけで、時間のかかっていたアライメント作業の苦労から解放されます。

バーティノフマスクで
“らくらく”ピント合わせ

天体写真でもっとも難しいのは、「ピント合わせ」かもしれません。デジタルカメラのライブビューや試し撮り、中には電動でピントを調整する「モーターフォーカサー」を使っている方もいらっしゃるでしょう。

そんな時に便利なアイテムが「バーティノフマスク」です。鏡筒の対物レンズ側に取り付け、ライブビューに現れる光の線を見ながら3本の線が均等になるように調整すれば、簡単にシャープなピント合わせができます。

フォーカスについて

きれいな星空を写すにはピントを正しく合わせることが大切ですが、いざ正確に合わせようとすると、実はとても難しい作業です。星は点として写るので、ピントが合ったかどうかを判断することが難しいのです。

デジタルカメラを通して星を見る場合は、カメラについている小さな液晶で判断することになるためさらに難しく、失敗して撮り直すことが多くなります。

バーティノフマスク

バーティノフマスクは、樹脂製の円盤にいくつかのスリットが開いたもので、望遠鏡の対物レンズ側に取り付けて使用します。

バーティノフマスクを取り付けると、スリットによる回折で星に3本の光条がついて見えます。ピントが合っている状態では、この3本の光条が等間隔に並びます。カメラのライブビューなどで光条を見ながら、3本が等間隔になるようにフォーカスを調整すれば、簡単にピントを合わせることができます。

ステラショットのライブビュー機能を使用すると、PCの大きな画面にライブビューを表示できるため、ピント合わせはさらに簡単になります。

ステラショットで
“らくらく”構図決め

撮影を始めると、今度は目的の天体を画角におさめるのに意外と苦労するものです。望遠鏡が自動導入してくれるはずですが、そもそもこれがずれてしまって天体がなかなか見つからないこともあります。望みの構図に調整するために、望遠鏡のハンドコントローラで少しずつ動かしながら試し撮りを繰り返すなど、楽しいはずの撮影が構図調整だけで時間を取られてしまいます。

ステラショットを使えば、そんな悩みも解決します。導入のずれは「導入補正」によって一発で正確な位置に調整されます。さらに構図の調整も、試し撮りした画像から中心にしたい場所をクリックするだけ。エラーの補正も構図調整も思いのままです。

構図調整について

自動導入望遠鏡でも、極軸やアライメントの誤差により、正確な導入はなかなか難しいもの。目的の天体を導入した後に、何度も構図の調整をすることが少なくありません。

また、必ずしも一つの天体が中心にあればよいというわけでもありません。複数の天体を同時に収めたり、彗星などでは尾の方向にずらしたり。思い通りの構図にするための調整も必要です。

こうした調整は、実際に試し撮りを行いながら、ハンドコントローラで微妙な調整を繰り返すという、気の長い作業でした。

ステラショットによる構図決め

ステラショットは、前述の「導入補正」により簡単に正確な導入が可能になっているため、繰り返し作業による微調整は過去のものになりました。

撮影した画像で、中心にしたい場所をクリックすれば、ここが中心になるように望遠鏡を動かしてくれる機能も備えているので、撮影した画像を見ながら構図を調整するのもとても簡単です。

カメラの画角はPC画面に表示される星図上にも表現されるので、撮影される構図も一目瞭然です。

ステラショットやバーティノフマスクといったアイテムを使えば、天体写真にまつわる様々な手間を省いて、天体撮影そのものに多くの時間を割くことができるようになります。まずはご自身の機材で体験してみてください!

画像提供・協力/谷川正夫吉田隆行、玉川大学生物自然研究会星班、渡部直樹