水星探査機「みお」、X線オーロラを起こす電子を観測

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日欧の探査計画「ベピコロンボ」の水星フライバイ中に、JAXAの探査機「みお」が水星磁気圏を観測し、オーロラなどの原因となる電子が地球と良く似た機構で輸送されていることを明かした。

【2023年7月25日 JAXA宇宙科学研究所

太陽系の岩石惑星で固有磁場を持っているのは、地球以外には水星しかない。水星の固有磁場は地球の1%程度と弱く、磁気圏のサイズも小さいが、唯一地球の磁気圏と比べられる絶好の環境にある。地球近傍で起こる現象が水星ではどのように変化するか、共通する点は何かを理解することが重要だ。

地球では、太陽から吹き付ける高速のプラズマ流「太陽風」と磁気圏の相互作用が長年にわたって研究されてきた。電子などのプラズマは磁気圏で磁力線の形状が急激に変化したときなどに加速・輸送され、地球の大気に衝突するとオーロラを起こす。

一方、これまで水星を訪れたNASAの探査機「マリナー10号」や「メッセンジャー」は、この惑星でも磁力線の急激な変化が起こることを発見した。また、大気を持たない水星の地表に電子が衝突することで起こったと考えられるX線オーロラも観測されている。ただ、電子が水星の磁気圏でどのように輸送され、どのようにして地表まで降り込むかはわかっていなかった。

今回の研究の模式図
今回の研究の模式図(提供:相澤紗絵)

2018年10月に打ち上げられたJAXAの水星磁気圏探査機「みお(MMO)」と、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の水星表面探査機「MPO」の2機からなる日欧水星探査ミッション「ベピコロンボ」は、2025年12月の水星周回軌道投入へむけて現在惑星間空間を航行中だ。その航行中には計9回の惑星フライバイ(地球1回、金星2回、水星6回)が予定されており、2021年10月に1回目の水星フライバイを実施した。その際、ベピコロンボは高度200kmの距離まで水星に近づき、「みお」は磁気圏のプラズマを観測した。

このフライバイは、観測史上初めて水星磁気圏の南半球に迫るものでもあった。「みお」に搭載されていた機器は、プラズマに含まれる電子とイオンを水星では初めて同時に観測することに成功し、さらに、加速された電子が南半球磁気圏の朝側で惑星表面へと降り込む様子を直接とらえた。磁気圏モデルを用いて「みお」がとらえた電子の挙動を調べたところ、朝側の磁気圏尾部で、地球と非常によく似た過程で加速・輸送されたものである可能性が高いことがわかった。

今回、大きな制約のあるフライバイ中の観測で成果が得られたことから、すでに実施された2回目と3回目を含めた計5回の水星フライバイ時の観測データはもちろんのこと、水星周回軌道到着後の2026年3月に始まる本格的な観測にも大いに期待ができそうだ。

水星のX線オーロラの想像図
X線オーロラが引き起こされている水星表面と、観測を行うベピコロンボの想像図(提供:Creative Commons Attribution-ShareAlike 4.0 International (CC BY-SA 4.0) Thibaut Roger/Europlanet)