せいめい望遠鏡の新システム「TriCCS」が本格稼働
【2021年5月19日 キヤノン株式会社】
2019年2月から運用されている京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡は、口径3.8mの主鏡で可視光線から近赤外線領域の光をとらえ、軽量架台によって素早く天体に向けられる機動性を特徴としている。その性能を最大限に引き出す観測システム、可視光三色同時撮像装置「TriCCS」が開発され、8月2日から共同利用観測での稼働が始まる。
「TriCCS」が搭載されたせいめい望遠鏡(提供:京都大学岡山天文台)
TriCCSは京都大学と東京大学が共同で開発した装置で、せいめい望遠鏡が集めた光をgバンド(緑)、rバンド(赤)、iまたはzバンド(赤外線)の3つの波長帯に分けて、それぞれを同時にCMOSカメラで撮像する。カメラにはキヤノン製の35mmフルサイズ超高感度CMOSセンサー「LI3030SAM」と「35MMFHDXSMA」が採用された。超高感度かつ低ノイズで、最大98fps(秒間98枚)の高速での撮影が可能だ。
活躍が期待される分野としては、明るさの変化が速く撮影が難しい中性子星やブラックホールなどの複数波長による同時観測が挙げられる。また、同じくキヤノンの超高感度CMOSセンサーを採用している東京大学木曽観測所の観測システム「トモエゴゼン」との連携により、発見された超新星を数日以内に高感度で追加観測することもできる。
TriCCS内部の仕組み(提供:キヤノン株式会社)
公開されたTriCCSによる撮影画像では、わずか100秒の露出時間で天体が鮮明にカラーでとらえられているのが見て取れる。この性能を活かして天体の微弱かつ短時間の光度変化をとらえ、宇宙と生命の起源の解明に貢献することが期待されている。
TriCCSで撮影された、子持ち銀河M51と、ふくろう星雲M97。それぞれ10秒露出×10枚ずつ(提供:京都大学岡山天文台/東京大学)
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