Part-7 日本海側はあきらめるしかないのか?


 前の3つの章では、この時期に多い3つの気圧配置ごとにその晴天域をみてきました。しかし、日本海側では、もっとも晴れやすい移動性高気圧の場合でも、必ずしも日本海側で晴天率は高くありません。

 日本海側では、今回の月食を見ることはあきらめるしかないのでしょうか?
 この章では、日本海側で晴れる場合はどのようなときか探ってみたいと思います。

 この時期日本海側が晴れることは少ないのですが、まったくないわけでありません。1月10日に日本海側が晴れた場合を分類してみると、以下のような傾向がありました。

 

● 優勢な移動性高気圧に覆われた場合

 まずは、優勢な移動性高気圧に覆われた場合です。1971年の例を下に示しました。この年の気圧配置は、複数の移動性高気圧が東西に連なった帯状高気圧になっていて、日本海側でも多くの地点が晴天に恵まれました。

日本海側も晴天に恵まれた1971年1月10日の雲量分布

● 日本海側も晴天に恵まれた1971年1月10日の運量分布
 この時期の移動性高気圧は春や秋に比べてその勢力が小さい傾向があるが、この時期でも優勢な高気圧がやってきた場合は日本海側でも晴天になるようだ。

 

● 低気圧の中で晴天になる場合

 次は、低気圧が通過している際に晴天になった場合です。低気圧の近くは悪天のことが多いのですが、Part-5 でも書いたように低気圧の中でも雲に隙間がある場合が3通りありました。

 ひとつ目は、低気圧がふたつ南北に並んで接近している「2つ玉低気圧」の場合です。2つの低気圧の間に挟まれた領域が相対的な高圧部になり、ここが晴れる場合です。ただし、この場合の晴天はそう長続きしないことが多いようです。

 2つ目は、前線を伴う発達した低気圧の西側に小さな低気圧が続く場合です。この場合、この小さな低気圧とその南側の寒冷前線との間に晴天域が生じる場合が多々あります。この晴天域はその後ろに続く冬型の領域へとつながりその後晴れつづけることも多いのですが、上空に寒気団があり、風が強くかなり冷え込むことが多いので防寒には充分に注意が必要です。

 3つ目は、日本海に低気圧が入る場合です。この低気圧に日本の寂寥山脈を越えて南風が吹き込んだ場合に、フェーン現象的に日本海側が晴れる場合です。これはちょうど冬型の気圧配置の場合と逆向きに風が吹くことによって生じるものです。

 以上3つを挙げましたが、いずれの場合でもこうなれば必ず晴れるといったレベルのものでなく、晴れている領域もそれほど広くないことが多いようです。

 

11月17日18時天気図 11月17日18時雲画像

● 日本海側が晴れる場合がある西側に小低気圧を伴う低気圧の例
 1998年のしし座流星群の日の18時の天気図と雲画像。前線をともなう低気圧の西側に小さな低気圧がある。この場合、主低気圧の西側、小低気圧とその南の寒冷前線との間に晴天胃気が生じる場合が多い。このときの雲画像をみると、山陰地方にわずかに雲に隙間があいているのがわかる。
 この小低気圧は、寒気の中心にできるものなので、この場合はひじょうに寒くなる。

 

● まとめ: 日本海が晴れるのは?
・ 優勢な移動性高気圧に覆われた場合
・ 低気圧の中で晴天になる場合
  → 2つ玉低気圧
   発達した低気圧の西側に小さな低気圧が続く場合
   日本海に低気圧が入る場合

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