Part-3 皆既月食の日の気圧配置


 つぎに、皆既月食の日の気圧配置を見てみたいと思います。実際の天気は、おもに高・低気圧や前線と観測地点の間の位置関係で決まってきます。そのため、皆既月食の日の気圧配置のパターンを見極める必要があるでしょう。

 そこで、皆既月食の日とその前日、1月9〜10日の気圧配置を過去60年分調べてみました。

 日本付近の気圧配置は、次の6つのパターンに分類されます。西高東低(冬型)・気圧の谷(低気圧)・移動性高気圧・前線(停滞前線)・南高北低(夏型)・台風です。この他に、これらの移行型・中間型とこれらの結合型の分類がありますが、今回は移行・結合型としてまとめました。

1月9・10日の気圧配置

● 皆既月食の日とその前日の気圧配置の出現率(1941〜2000年)
 皆既月食の日の気圧配置は、西高東低の冬型がもっとも多く40%近くを占め、この時期の天気は冬型に支配されていることがわかる。
 気圧配置型の分類法と1941〜70年のデータは Yoshino and Kai(1974)による。1971〜80年はYoshino and Yamakawa(1984)、1981〜2000年は筆者の判定による。文献はいずれも Climatological notes, Institute of Geoscience, University of Tsukuba より。

 この結果を見ると、この時期は西高東低の冬型の気圧配置になることがもっとも多く、約40%程度となっています。 続いて、低気圧が通過することが25%程度、移動性高気圧に覆われることが15%程度を占めています。逆に夏型の気圧配置になることや、台風がやってくることは、今回はまずないでしょう。
 一般に、冬型の場合は太平洋側で晴天、日本海側で悪天のことが多いのは、みなさんもご存知のことでしょう。先ほどの雲量分布の傾向は、この時期冬型の気圧配置となることが多いためであると、説明できることになります。

 さらに、移行型・複合型の年をくわしく分類し、たとえば冬型から移動性高気圧への移行形に分類された年を、冬型が0.5年分と移動性高気圧が0.5年分としてカウントしなおしてみると、皆既月食の日の気圧配置は、冬型が42%・低気圧通過が33%・移動性高気圧が22%・停滞前線が5%となりました。

 一般的に、気圧の谷通過と前線停滞時には悪天、移動性高気圧に覆われるときは晴天です。また、冬型の場合は先ほど書いたように太平洋側で晴天、日本海側で悪天のことが多いです。以上のことを考えあわせれば、今回の皆既月食の日に“晴れる気圧配置”となる確率は、日本海側で移動性高気圧型のみの約22%、太平洋側ではそれに冬型の約42%がプラスされた約64%となります。さきほどの皆既月食の日に太平洋側のほうが晴れやすいという傾向は、太平洋側ではこの冬型の晴天の分のプラスがあるためといえます。

 それでは、それぞれの気圧配置になった場合、どこが晴れるのでしょうか? 次の章からは、この時期に出現率の高い気圧配置順にその傾向をまとめてみました。

 

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