近内令一 電気羊の見る月はアンドロ目玉焼きの夢より楽しいか INPRESSION

月面CCD撮像についての雑感


 月面の表情は、照明条件(太陽光線の当たり具合)によって激変する。月面を望遠鏡で眺めるたびに新しい地形に気付き、決して飽きることがない。私は貪欲だ。もっともっと月面の地形を楽しみたい!

 銀塩写真では考えられなかったような月面画像を、CCDを使うと得ることができる。CCDを使って口径の限界に迫る凄い月面画像を撮る人がどんどん増える。そうすればもっといろいろな照明条件下の詳しい月面の地形を楽しめる。……これがこのささやかなギャラリーの大きな目的のひとつ。

 さて、CCDで月面を撮像すること。そして画像処理をすること自体はとても簡単。パソコン音痴だった私でも(初めてのパソコン2台と冷却CCDカメラを同時に購入した)、3日目でなんとか画像が出せて、2ヵ月ほどでかなり満足のいくプリントアウトが得られるようになったくらいだ。

 問題は望遠鏡の方だ。

 CCDで撮ったイメージを画像処理ソフトでいろいろいじるとかなりシャープに見える絵ができる。眼視でチェックするとかなり出来の悪そうな光学系でもけっこう迫力のある月面画像が(銀塩月面写真の感覚で考えると『驚異的』と思えるような)が得られる。

 このことについては、CCDで月面画像を撮る人の数が全世界的にもまだ少なく、この分野が現時点で過渡期であり、本当にブッタマげるようなCCD月面画像が頻繁に登場するのはこれからなのだ、と私は感じている。月面の拡大撮像についてのCCDシステムの潜在パワーは凄まじく、最良の光学系でベテランが撮った最高の銀塩月面写真を凌駕するような画像が普通の望遠鏡でバシバシ得られるわけだ。

 しかし、近い将来、CCDによる月面撮像システムがさらに洗練されていくならば、当然使用する天体望遠鏡のトータルパフォーマンスが大きな差となって最終画像の出来に反映するようになるだろう。

 だから、人に遅れを取らない月面画像を目指すなら、やはり光学系、鏡筒、架台回り……最高のシステムを心がけるべきだろう。

 私自身のシステムもまだ未完成で発展途上。私の観測所のシ−イング環境、私の財力、etc.から考えた、将来実現してみたい理想の月面撮像システムの概要を以下に記してみる。

 

  1. 50〜60?口径、合成F12〜15の最良のコンパクト光学系(純カセ、ドールカーカム、シュミットカセ、マクストフカセ……何でもよい)。副鏡径小さく、温度順応促進 システム完備。
  2. 頑丈で操作性の良好な赤道儀架台(フォーク式が良さそう?)。月追尾モードが必須。
  3. 最低160万画素でダウンロード15秒以内の一眼レフタイプのCCDカメラ/撮像/画像処理システム。

 

解説;

  1. この口径でニュートン式の高い位置の接眼部にはアクセスしたくない。年かな?……
  2. 恒星時ドライブでは、拡大した月の像は恐ろしいいきおいでズレて行く。
  3. 銀塩月面写真信奉者をノックアウトするには画素は多い方がもちろん良い。また、構図決め、シーイング監視……あらゆる点で100%フレーム視野の一眼レフ方式に勝るシステムはない。

 

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 眼視で眺める月面のイメージが好きな人は(私もそうです)、ひと晩に一回は月面を眼視で観察しましょう。モニター画像ばかり眺めてCCD撮像/画像処理に集中し続けていると、つい『デジデジ感過剰』の画像を量産するようになってしまいます。

 ……太古の昔から、世界中の誰の頭上にも輝いていた月。母の背であやされながら見上げた月(を覚えているような気がします)。ラッシュの京浜東北線の窓から踏切越しに一瞬通り過ぎる夕暮れの商店街の賑わいの上にかかっていた大きな満月。自作15?F9ニュートン式経緯台のfirst light(筆降ろし)、ミッテンゼーハイゲン9?150倍の上弦の月の欠け際は、憧れのあのウィルソン山天文台100インチ反射の月面写真にそっくり!

 ……私はどこで肉眼で眺める月も、またどんな望遠鏡で観察する月面も大好きです。もちろん月の写真、画像を楽しむのも。あなたの月面画像もぜひ見せて下さい!!

それでは、Good Skies with Excellent Scopes!!

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