地球大気の歴史を紐解いて系外惑星の生命を探す

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過去の地球大気の組成を系外惑星の環境に当てはめてモデル化することで、系外惑星に存在する生命の痕跡を観測でどの程度検出できるかを推定する研究が行われた。

【2018年2月26日 University of St Andrews

近年の系外惑星探査によって、様々な恒星で地球サイズの惑星がいくつも発見されており、近い将来にこうした惑星の観測から地球外生命の痕跡が見つかる期待が高まっている。地球外生命の探索では、生命が存在する証拠となる物質や物理現象を検出することが目標となり、そのような生命存在の痕跡を「バイオシグネチャー(biosignature)」と呼ぶ。しかし、仮に系外惑星に生命が存在していたとしても、惑星の年齢や生命の進化の度合といった条件によっては、地球からの観測でバイオシグネチャーを見つけることが難しい可能性もある。

英・セント・アンドルーズ大学のSarah Rugheimerさんたちの研究チームは、地球の歴史の中で、生命が誕生する前の時代である39億年前、微生物が誕生して地球上で初めて酸素が増え始めた20億年前、2度目に酸素濃度が上昇した8億年前、そして現在の4つの時代に注目した。これらの時代ごとに、地球大気に含まれる酸素・メタン・二酸化炭素の存在量は大きく異なっていたと考えられている。そこでRugheimerさんたちは、様々なタイプの恒星に地球型惑星が存在するケースを考え、その惑星の大気が地球の上記4つの時代における組成と同じだと仮定して大気環境のモデルを構築した。さらに、そのような惑星大気を観測した場合にバイオシグネチャーを検出できるかどうかを調べた。

「地球の歴史を研究し、恒星からの光と惑星大気との相互作用がどのように変わるのかを調べることで、将来の観測結果の理解に役立つモデル群を作ることができます。特に今回の研究では、バイオシグネチャーとなるガスが地球の歴史においてどのくらい検出可能であったか、また、惑星系の中心星の違いによってそれがどう変わるかを知りたいという動機がありました」(Rugheimerさん)。

赤色矮星を巡る系外惑星の想像図
惑星系のイラスト(提供:University of St Andrews, CC0 Creative Commons)

研究の結果、系外惑星の大気が時代とともにどう変化し、生命の痕跡を観測でどの程度検出できるかは、中心星のスペクトル型によって変わってくることがわかった。さらに、惑星表面を覆う雲の割合や大洋・大陸といった表面地形がモデルに与える影響についても調べられ、バイオシグネチャーとなるガスは、惑星表面の雲の割合が多いほど検出しづらくなり、惑星の年齢が古いほど検出できる可能性が高いことが明らかになった。

今回得られた成果は、地球型の系外惑星で将来バイオシグネチャーが見つかった際に、観測結果を解釈するための基礎となるかもしれない。ただし、今回の研究成果を遠方の系外惑星の観測結果に正確に適用するためには、より大きな望遠鏡での観測データが必要だ。

「2019年に打ち上げが予定されている『ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡』を使えば、生命が存在できる地球型惑星が赤色矮星の周囲を公転する様子も観測できるようになります。また、2020年代半ばに稼働予定のヨーロッパ南天天文台の『欧州超大型望遠鏡(European Extremely Large Telescope; E-ELT)』を使うことで、そうした系外惑星の姿を直接撮影できるようになるかもしれません」(Rugheimerさん)。