キュリオシティの5年半の旅路を振り返る
【2018年2月2日 NASA JPL】
NASAの火星探査車「キュリオシティ」は、2012年8月に火星のゲール・クレーター内部に着陸し、以降5年半にわたり稼動を続けている。現在はゲール・クレーターの中央に位置するシャープ山(高さ約5000m)の裾野を350mほど登った地点にいる。
昨年10月25日、キュリオシティはシャープ山北側の裾野にある尾根「ベラ・ルービン・リッジ(Vera Rubin Ridge)」から、これまでの約18kmに及ぶ旅路を一望するパノラマ画像を撮影した。画像に写っている地平線の山々は、キュリオシティから約2km離れたゲール・クレーターの北縁だ。その向こうには、同クレーターから約85kmの距離にある山も写っている。撮影が実施されたのは火星の北半球が冬至を迎える直前で、空が澄んでいる季節だったおかげで遠方まで詳細にとらえられている。
「キュリオシティはシャープ山の裾野を5年間登り続けてきましたが、来た道を振り返って、このミッションの探査地域すべてを見渡すことができたのはこれが初めてです」(キュリオシティ・プロジェクト・サイエンティスト Ashwin Vasavadaさん)。
画像に写っている「イエローナイフ湾(Yellowknife Bay)」は、微生物に必要な化学成分をすべて含む淡水湖が過去に存在した証拠が2013年に見つかった場所だ。さらに北(画面奥)には「ピース谷(Peace Vallis)」の河床と扇状地が写っている。これは約30億年前にクレーターに水と堆積物を運んだ川の名残だ。また、キュリオシティの進路上の「キンバリー(Kimberley)」や「マレー・ビューツ(Murray Buttes)」といった場所もとらえられている。
パノラマ画像が撮影された場所は着陸地点より約327m高いところだったが、3か月の現在、キュリオシティはさらに26m高い場所へと移動している。ここ数日間は、次の探査目的地「クレイ・ユニット(Clay Unit)」を臨む南方向のパノラマ画像を撮影したところだ。クレイ・ユニットでは上空からの過去の探査で粘土鉱物が検出されており、かつて水が豊富な環境だったと考えられている。
こういったパノラマ画像や分析データなど、キュリオシティが得た大量のデータを地球に送信する上で、火星周回軌道にいる探査機「メイブン」にデータを中継させる大容量通信が最近活用されている。
これまで、キュリオシティからのデータ送信は、火星をほぼ円軌道で周回する火星探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」や「マーズ・オデッセイ」経由で行われてきた。一方、メイブンは非常に細長い楕円軌道を周回しているため、メイブンが近火点(軌道上で火星に最も近づく点)付近に来たタイミングでうまくキュリオシティの上空を通過する場合には、メイブンを中継に使う方がより多くのデータを送ることができる。1月22日にはメイブンの中継を介して、これまで最大だった840メガビットを超える1006メガビットのデータ送信に成功した。探査機経由での火星からの通信で一度に1000メガビットを超えるデータが送信されたのはこれが初めてだ。
現在キュリオシティ・チームは、クレイ・ユニットでの探査に先立って、岩石の分析にドリルを再使用する準備を進めている。キュリオシティのドリルは、ロボットアームの先端から出ている2本の支持棒を岩石に当ててアームを支え、支持棒の間に格納されているドリルの刃をモーターで繰り出しながら穴を開ける仕組みだ。しかし、2016年12月に刃の繰り出し機構が動かなくなり、それ以降ドリルは使われていなかった。チームではトラブルを解決するための試行を繰り返し、2017年8月にドリルの刃を何とか最大長まで繰り出すことに成功した。今後は刃を繰り出したままの状態で、支持棒の支えなしで岩石に直接刃を当て、ロボットアームの力で刃を岩石に押し付けながら穴を開けるという方法をとることにしている。
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