八王子隕石とされる隕石、初の詳細分析

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約200年前に多数落下したもののほとんど散逸し失われてしまっていた「八王子隕石」について、1950年代に見つかったわずかなサンプルが最新技術によって分析された。

【2018年1月9日 国立極地研究所九州大学総合研究大学院大学

今から約200年前の1817年12月29日、現在の東京都八王子市中心部に多数の隕石が落下した。この「八王子隕石」については当時の日記などの史料に多くの記録が残されており、約10kmの範囲に長さ1m程度のものを含む多くの破片が落下した「隕石雨(隕石シャワー)」だったことがわかっている。

隕石の一部は江戸幕府勘定奉行所に届けられ、当時天体運行や暦の研究を行う幕府の機関だった「天文方」によって調べられたが、現在までに隕石はすべて散逸し、失われてしまっていた。

1950年代になり、京都の土御門(つちみかど)家の古典籍から約0.1gの隕石小片が発見された。この小片が「隕石之事」と書かれた紙包みの中に入っていた八王子隕石について書かれた紙に挟まれていたことから、八王子隕石の一つであると考えられた。しかし、同じ包みの中に曽根隕石(1866年6月7日、現在の京都府京丹波町に落下した約17kgの隕石)について書かれた紙も入っており、曽根隕石の一部である可能性も否定できなかった。

八王子隕石と断定できる隕石は今のところ見つかっていないため、小片を八王子隕石であると証明する方法は、曽根隕石との違いを発見することにある。しかし、従来の技術では、微量な隕石小片を分析することが困難だった。

国立極地研究所の山口亮さんたちの研究グループは、探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星「イトカワ」の試料の分析にも用いられた最新の技術でこの隕石の分析を行った。

今回分析された隕石
今回分析された隕石(国立科学博物館所蔵)。図中の黒線は5mm(提供:総研大のプレスリリースより)

光学顕微鏡による組織観察や電子線マイクロアナライザによる鉱物組成の分析、X線回折装置による分析、希ガスの分析を行ったところ、この隕石小片は「普通コンドライト」と呼ばれる種類であること、化学的グループは曽根隕石と同じ「H」で岩石学的タイプは「5」(以下「H5」と略す)であることがわかり、分析した小片と曽根隕石の違いはほとんど見つからなかった。

これらの結果から、分析した隕石小片は八王子隕石ではなく曽根隕石という可能性が考えられる。一方でH5普通コンドライトは全隕石の約18%を占めている最も多い種類の隕石であることから、八王子隕石と曽根隕石がたまたま同じタイプの隕石であった可能性もある。

八王子隕石は数多く降り注いだとされていることから、隕石の一部が今も八王子市内の旧家などに残っているかもしれない。研究チームは、今後広く一般に呼び掛けることで、八王子隕石の発見と分析を進める計画だ。