水のない息詰まる成層圏を持つ系外惑星

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ホットジュピターの一つ「WASP-18 b」は、一酸化炭素が充満し水がほとんど存在しない成層圏に包まれているようだ。

【2017年12月6日 NASANASA JPLSpitzer Space Telescope

惑星大気中の成層圏の形成は、日焼け止めのような役割を果たす分子に起因するものだ。これらの分子は主星からの紫外線などを吸収し、そのエネルギーを熱として放出する。地球では成層圏中のオゾンがその物質であり、成層圏の存在が知られているわずかな系外惑星では一般に酸化チタンが吸収剤となっている。

成層圏を持つ系外惑星探しを行っているNASAゴダード宇宙センターのKyle Sheppardさんたちの研究チームは、ほうおう座の方向約325光年の距離に位置する系外惑星「WASP-18 b」に目を向け、ハッブル宇宙望遠鏡と赤外線天文衛星「スピッツァー」による観測データを分析した。WASP-18 bは木星の10倍の質量を持つ惑星で、中心星の周りをわずか23時間で公転している。主星のすぐ近くを巡る高温の大質量ガス惑星、いわゆるホットジュピターの一つだ。

WASP-18 bと主星の想像図
(中央)WASP-18 bと(右側)主星の想像図(提供:NASA/JPL-Caltech)

惑星が主星の手前を横切る現象(トランジット)が起こると、主星の光が惑星の大気を通過するため、その光を分光することで大気中の成分を調べることができる。分析の結果、1.6μm付近に吸収スペクトル、4.5μm付近には輝線スペクトルが見られた。

この特徴を説明するために大規模なモデル計算を行ったところ、WASP-18 bでは成層圏に高温の一酸化炭素、成層圏の下にある対流圏に温度が低い一酸化炭素が存在すると考えられることがわかった。系外惑星の大気中に、1種類の物質の分子について2つのタイプのスペクトルが検出されたのは、これが初めてである。また、水蒸気がほとんど存在しないこともわかった。

「WASP-18 bの大気を矛盾なく説明できるのは、成層圏が存在し、一酸化炭素が過剰で水がほとんどないというモデルだけです。この珍しい組成は、系外惑星の大気中で起こる物理過程や化学過程の理解につながる新しい窓を開くものです」(英・ケンブリッジ大学 Nikku Madhusudhanさん)。

また、WASP-18 bの大気に含まれる「金属」(水素やヘリウムより重い元素)の量は、他のホットジュピターと比べて300倍以上も多いとみられている。WASP-18 bの形成時に集まった氷が木星の形成時に比べてはるかに多かった可能性を示唆するデータであり、この惑星が他のホットジュピターと異なるプロセスを経て形成されたことを意味しているのかもしれない。