46億光年彼方の銀河の磁場を調査

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重力レンズ効果を利用した観測により、約46億光年彼方の銀河の磁場が調べられた。銀河の進化において磁場が果たす役割を理解するための重要な情報が得られるかもしれない。

【2017年9月4日 NRAO

磁場は銀河内の星間空間に満ちる希薄なガスの物理に重要な役割を果たしており、磁場の起源や進化を理解することは、銀河そのものの進化に関する重要な情報を得ることにつながる。

独・マックス プランク電波天文学研究所のSui Ann Maoさんたちの研究チームは、米・カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を用いて、しし座の方向約79億光年彼方にあるクエーサーから発せられた電波を観測した。

この電波は地球とクエーサーとの間、地球から約46億光年彼方に位置する星形成銀河の重力レンズ効果を受け、2つのシグナルとして観測されたが、重要なのはその電波が偏光していた点だ。「背景に位置するクエーサーからの電波が偏光していること、電波が重力レンズ源となった銀河の異なる2か所を通過しクエーサーが2つの像としてとらえられていること、この2つの事実を合わせると、銀河の磁場に関する重要な事実を知ることができます」(Maoさん)。

重力レンズ効果を利用した銀河の磁場計測概念図
重力レンズ効果を利用した銀河の磁場計測概念図。クエーサーからの電波AとBが重力レンズ源となった銀河の異なる領域をそれぞれ通過し、2つの重力レンズ像が現れる。(左から)遠方のクエーサー、銀河のイラスト、VLA(提供:Bill Saxton, NRAO/AUI/NSF; NASA, Hubble Heritage Team, (STScI/AURA), ESA, S. Beckwith (STScI). Additional Processing: Robert Gendler)

重力レンズ像2つと手前に位置する銀河
ハッブル宇宙望遠鏡による重力レンズ像2つ(A、B)と、レンズ源となった大質量の星形成銀河(提供:Mao et al., NASA)

重力レンズ効果を受けた2つのクエーサーの像には、電波の偏光がどのように変えられたのかを示す大きな違いが見られた。これは地球とクエーサーの間に位置する銀河内の別々の領域が、電波にそれぞれ異なる影響を及ぼしたことを示している。「この違いから、現在の宇宙に存在する銀河と同様に、46億光年彼方の銀河にも大スケールの可干渉性磁場が存在しているということがわかります」(Maoさん)。類似性は磁場の強さと、磁力線が銀河の回転軸の周囲で螺旋状にねじれているという並び方の両方に見られる。

今回の研究は、銀河の磁場がどのように形成され、宇宙の歴史の中で進化してきたのかに関する重要な情報となる。「太陽磁場の発生プロセスと同様に、回転によるダイナモ作用で銀河の磁場が発生しているという考え方を支持する結果ですが、磁場を発生させ得るプロセスは他にもあります。実際にどのプロセスが起こっているのかを特定するには、時間をもっとさかのぼった、より遠くの銀河の磁場を同じように計測する必要があります」(Maoさん)。