木星探査機「ジュノー」11日に大赤斑上空を飛行、「すばる」などが支援観測

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木星探査機「ジュノー」は7月11日に大赤斑の上空を飛行する。その探査の支援として、すばる望遠鏡とジェミニ北望遠鏡も木星を観測している。

【2017年7月4日 東北大学理学研究科・理学部すばる望遠鏡Gemini Observatory/NASA JPL(1)(2)

この7月で木星周回開始からちょうど1年を迎える探査機「ジュノー」は、現在6回目の接近飛行の準備中だ。長い楕円軌道で木星を周回しているジュノーが次に木星に最接近するのは7月11日午前11時ごろ(日本時間)で、木星の雲頂から3400kmのところを飛行する。その最接近の約12分後にジュノーは大赤斑の上空9000kmを飛行し、搭載されている8つの観測機器で大赤斑を探査する。

この際に実施される木星大気の探査を支援する目的で、米・ハワイ・マウナケア山頂に設置されているすばる望遠鏡とジェミニ北望遠鏡が観測した、大赤斑やその他の領域における異なる深さごとの大気の動きに関する高解像度データも用いられる。ジュノーは軽量化・低コスト化のため、対流圏と成層圏域の温度・組成・運動情報を握る中間赤外域の観測手段を搭載しておらず、「地上からの観測で補完する」という戦略を取っている。そのため、地上からの支援観測が必要となるのだ。

観測は今年1月と5月に行われ、とくに5月に行われた観測では、すばる望遠鏡が、北から南へと向かうジュノーの経路の直下域を含む領域の雲層と成層圏大気の温度場・雲層厚、およびその運動・時間変化に関する観測データを取得・提供した。

また、ジェミニ北望遠鏡は特殊な近赤外線フィルターを使った観測で、大赤斑中の渦を巻く構造や木星大気中のメタンと水素の混合物の存在を明らかにし、さらに大赤斑の東側に伸びる長く細かい構造の波をとらえた。

両望遠鏡の観測データとジュノーによる初の深部情報とを結合させることで、大気擾乱が起こっている大赤斑などの領域に関する初の「3次元大気情報」を得ることが可能となる。

すばる望遠鏡とジェミニ北望遠鏡が撮影した木星
(左)2017年5月18日にすばる望遠鏡の冷却中間赤外線分光撮像装置「COMICS」で撮影した木星の擬似カラー画像(提供: NASA/JPL, 国立天文台)/(右)同日にジェミニ北望遠鏡の近赤外線撮像器「NIRI」で撮影した木星の擬似カラー画像(提供: Gemini Observatory/AURA/NSF/JPL-Caltech/NASA)

大赤斑は350年以上前から木星に存在する、地球よりも大きい渦を巻く嵐だ。「この巨大な嵐が一体どの深さまで続いているのか、またその仕組みを理解するため、観測に挑みます」(米・サウスウエスト研究所 Scott Boltonさん)。