極が移動した土星の衛星「エンケラドス」

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土星の衛星「エンケラドス」の自転軸が過去に何らかの理由で55度ほどずらされ、極が移動したかもしれないという研究成果が発表された。小天体の衝突が原因かもしれない。

【2017年6月1日 NASA JPL

土星の衛星「エンケラドス」の南極付近は、長く線状に伸びるひび割れた「タイガーストライプ(虎縞)」と呼ばれる地形が存在し、地質学的に活動が活発だ。2005年には土星探査機「カッシーニ」により、タイガーストライプから水蒸気や氷の粒を含むジェットが噴き出す現象がとらえられ、衛星の地下に海が存在している証拠と考えられている。

エンケラドス
エンケラドス(提供:NASA/JPL-Caltech/ Space Science Institute)

米・コーネル大学のRadwan Tajeddineさんたちの研究チームはカッシーニの観測から、エンケラドスの地表に帯状に連なる低地を発見し、この地形がかつての赤道と両極の名残りだと考えた。そして、タイガーストライプは過去にはもっと赤道近くに位置していたが、何らかの理由によって衛星の自転軸が元の状態から55度以上ずれてしまったらしいことを示した。

「現在のエンケラドス南極付近の活動は、衛星内部のプロセスによって引き起こされたものではなさそうです。小天体の衝突があったのかもしれません」(Tajeddineさん)。

タイガーストライプの形成の原因が何であれ、この現象によってエンケラドスの質量分布の再配分が起こったはずだ。その結果、衛星の自転はふらふらと不安定なものになってしまう。自転は100万年以上の時間をかけて最終的に安定したが、自転が落ち着くまでに、自転軸が移動する現象である「極移動」というメカニズムが働いていたという。

エンケラドスを傾けたりタイガーストライプを移動させたりするような現象が起こる前までは、エンケラドスの北極と南極はもっと似ていたはずだと考えられる。しかし、現在のエンケエラドスの南極は地質学的に活動が活発で若いのに対し、北極はクレーターに覆われていて南に比べずっと古く見える。極移動という考え方は、なぜエンケラドスの現在の両極が異なって見えるのかを説明するための一助となるようだ。