系外惑星の大気の多様性を示す「ウォーム・ネプチューン」

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海王星サイズの系外惑星HAT-P-26 bの大気が、ほとんど水素とヘリウムで構成されていることがわかった。太陽系の惑星とは異なる傾向であり、系外惑星の大気の多様性を示すものだ。

【2017年5月12日 NASA JPL

おとめ座の方向約437光年彼方に位置する「HAT-P-26 b」は、2010年にトランジット法で発見された系外惑星だ。海王星ほどのサイズで、主星に近いところを公転していることから、「ウォーム・ネプチューン」(温暖な海王星型惑星)に分類されている。

トランジット法では、地球から見て主星の前を天体が通り過ぎる現象を観測して惑星を検出するが、その際に主星の光が惑星の大気に吸収されることで生じるスペクトルの変化を調べることにより、惑星大気の化学的な組成を知ることができる。

NASA・ゴダード宇宙センターのHannah Wakefordさんたちの研究チームがハッブル宇宙望遠鏡と赤外線天文衛星「スピッツァー」を使って行った研究から、HAT-P-26 bの大気はほぼ水素やヘリウムで構成されていることがわかった。

惑星系の想像図
中心星HAT-P-26と系外惑星HAT-P-26 bの想像図(提供:NASA/GSFC)

太陽系の場合、木星の金属量(水素とヘリウム以外の元素の割合)は太陽の2~5倍、土星は太陽の10倍しかない。つまり、巨大ガス惑星はほとんど水素とヘリウムでできているということを示している。天王星と海王星では太陽の100倍ほどだ。この差は惑星形成の過程や環境の違いによるものと考えられている。天王星や海王星は原始太陽系の外側のほうで作られたため、重元素を含む凍った天体の破片が多く衝突して金属量が大きくなったのである。

一方、HAT-P-26 bの半径や質量は海王星と同程度だが、金属量は太陽の4.8倍しかない。太陽系の惑星とは全く異なる傾向である。「系外惑星の大気というのものが予想以上にバラエティーに富んでいることを示す結果です。惑星がどのようにして形成され、太陽系とは異なった進化をたどってきたのかに関する見識を与えてくれます」(英・エクセター大学 David K. Singさん)。