渦巻き模様が伝える星の最期のメッセージ

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年老いた星の周囲にガスの渦巻き模様がとらえられ、その模様の解析から、直接観測することができない連星系の軌道運動が導き出された。

【2017年3月7日 アルマ望遠鏡国立天文台

太陽の8倍程度よりも質量の小さい星は一生の最期に大きく膨んで、「赤色巨星」と呼ばれるタイプの星になる。赤色巨星から放出されたガスは、進化が進んでむき出しになった中心星の芯から放たれる強烈な紫外線に照らされ、「惑星状星雲」として見えるようになる。

惑星状星雲はさまざまな形を見せる天体だが、外側は球対称に近い一方で内側は非対称な形状を持ったものもある。まったく性質の異なる形状が一つの天体の中に共存することは非常に不思議だが、中心星が連星をなしていることが不思議な形状を理解する鍵になると考えられている。これを実際に観測で確かめるには、星の周りに生じたパターンを詳しく解析することが重要な手掛かりとなる。

台湾中央研究院天文及天文物理研究所のHyosun Kimさんたちの国際研究チームは、約3400光年の距離に位置する赤色巨星「ペガスス座LL星」をアルマ望遠鏡で観測した。ペガスス座LL星は直径が太陽の200倍以上に膨らんで盛んにガスを放出しており、惑星状星雲になる一歩手前の段階にある年老いた星だ。

観測によってペガスス座LL星から継続的に噴出したガスが放つ電波がとらえられ、星の周囲に広がるガスの渦巻き模様がはっきりと描き出された。

ペガスス座LL星の周囲に広がる渦巻き状のガス
ペガスス座LL星の周囲に広がる渦巻き状のガス(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Hyosun Kim et al.、以下同)

この星は連星をなしており、渦巻き模様の解析から連星系の軌道運動を導き出すことができる。シミュレーションと観測結果を比較したところ、渦巻き模様を作り出すためには連星の軌道が非常に細長い楕円であることが必要だとわかった。とくに、観測画像にもはっきりと表れている渦巻き腕の枝分かれこそが、細長い軌道を持つ連星系に特有の構造であることが突き止められた。

また、アルマ望遠鏡による観測では星の周囲を取り巻くガスに含まれる一酸化炭素やHC3N分子が放つ特定の周波数の電波をとらえており、ドップラー効果による周波数のずれからガスの運動を測定することができる。これにより、星から放出されるガスの運動が伴星の運動に伴って変化していく様子を明らかにすることができた。渦巻きの間隔の測定から、ペガスス座LL星を含む連星系の周期は約800年と推定されている。

ペガスス座LL星のデータを可視化した映像。動画の各コマは、それぞれ異なる速度を持つガスの分布を秒速1kmごとに表す。速度は画面右上に表示。視野は約3兆km(太陽~地球間の2万倍)

今回の成果は、星の直径の数千倍にも広がったガスの形状から、中央部に隠されて実際には直接観測できない連星の性質を調べるという、新しい研究手法を開くものだ。「この印象的な渦巻き模様は、自然からのメッセージといってもいいでしょう。メッセージを解読し年老いた中心星の姿を明らかにすることに、天文学者は挑んでいるのです」(Kimさん)。