• このエントリーをはてなブックマークに追加
ふたご座流星群(2016年)

冬の定番天文現象「ふたご座流星群」。毎年12月14日ごろにまとまった数の流れ星が見られます。

今年は月明かりの影響で見える数は減りそうですが、明るい流れ星が飛ぶかもしれません。

寒さ対策を万全に、安全やマナーに気をつけて、ぜひ夜空を見上げてみましょう。

一番の見ごろは13日深夜から14日明け方

極大時刻は14日午前9時

2016年のふたご座流星群の流れ星が最も多く流れる「極大時刻」は、12月14日午前9時ごろと予想されています。この時刻は日の出後なので、実際にはその前の時間帯が一番見やすいことになります。つまり12月13日の深夜から14日の明け方にかけての夜が一番の観察チャンスです。

※アニメーションは22時から4時までのシミュレーションですが、実際には19時くらいから5時くらいまで観察が可能です。

月明かりの影響が大きい

流れ星の観察は町明かりや月明かりの影響を大きく受けます。今年は14日が満月なので、13日から14日ごろにはほぼ一晩中、月が夜空を明るく照らしています。暗い流星が見えなくなってしまうため、目にできる流れ星の数は少なくなりそうです。

13日深夜22時から14日明け方4時まで、南の空を眺めた様子。場所の設定は東京(ステラナビゲータでシミュレーション)。

他の動画は ›› アストロアーツYouTubeチャンネル [YouTube]

見える数の予想

見晴らしが良く空が開けた場所であれば、13日深夜から14日明け方には1時間あたり20個程度の流れ星が見えると予想されています。

今年の場合は月明かりの影響が大きいため、町明かりがある場所で観察しても町から離れたところで見ても、見える数にそれほど大きな差はないと考えられます。空気の透明度や月から離れたところの空の明るさ、視界の広さをなどを考えると、やはり町のほうがやや見えにくくなりますが、それでも郊外では1時間あたり10〜15個ほどは見えそうです。ふたご座流星群の流れ星は明るいものも多いので、市街地でも1時間あたり10個ほどは見える可能性があります。

極大以外の日の場合、流れ星の数は減ってしまいますが、それでも普段の(活発な流星群のない)時と比べれば流れ星を目にできる可能性が高い時期です。寒い時期なので無理は禁物ですが、暖かい服装で少し長めに空を見上げて流れ星を待ってみましょう。

参考リンク:

観察のポイント

月から離れた方向を、広く見渡そう

流星群の流れ星は放射点(›› 解説)を中心として四方八方に飛びますが、いくつもの流れ星の流れた跡をたどっていくと放射点で交わるのであって、実際には空のいたるところに流れます。したがって、放射点の方向だけをじっと見つめるのではなく、空を広く見渡すのがポイントです。広場や校庭、河川敷など、視界の開けたところが良いでしょう。

とくに今年は放射点の近くに月があるので、なるべく放射点(月)から離れた方向を見るようにしましょう。月を直接目に入れないだけでも空の見え方はかなり改善するので、月に背中を向けたり月を建物で隠したりするなど工夫してみてください。

住宅地や自宅ベランダなど視界があまり開けていないところでは、町明かりの影響を避けるために街灯がない方向を眺めれば、流れ星が見つけやすくなります。月が低くなってきてからは、天頂方向を中心に眺めるのも良いでしょう。

13日深夜22時から14日明け方4時まで、空全体に流れ星が飛ぶ様子。場所の設定は東京(ステラナビゲータでシミュレーション)。

ステラナビゲータで見え方をシミュレーション

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」を使うと、流れ星が飛ぶ様子や周りの星座の見え方、撮影の構図などを調べられます。

ステラナビゲータ活用法はこちら ›› 「ステラナビゲータでふたご座流星群をシミュレーション」
(2015年の例ですが、2016年にも応用できます)

「ステラナビゲータ」でふたご座流星群をシミュレーション

15分くらいは見続けてみよう

1時間に20個の流れ星が見えるとすると、計算上は平均して3分に1個のペースで見えることになりますが、流れ方はランダムですので、立て続けに数個見えることもあれば5分以上も見えないことも珍しくありません。1つも見えないからと数分で諦めるのではなく、少なくとも15分くらいは見上げてみましょう(寒いので、あまり無理はしないように)。

この時期、宵のころであれば西の空に「夏の大三角」、天頂付近に「秋の四辺形」、北から東の空に「カシオペヤ座」や「プレアデス星団(すばる)」などが見えています。深夜になると放射点のある「ふたご座」が天頂に、「冬の大三角」や「オリオン座」が南の空に広がり、華やかな星々が流れ星の通り道を彩ります(月も目立ちます)。明け方には南東の空に「しし座」が上り、木星の輝きも目につきます。こうした星座や惑星を楽しみながら、流れ星が飛ぶのを待ってみましょう。

14日未明3時に、南→東→北→西→南の空を眺めた様子。場所の設定は東京(ステラナビゲータでシミュレーション)。

モバイルアプリで星座探し

流れ星を待つ間は、星座探しをしてみましょう。iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使えば、星や星座の名前がすぐにわかります。

※まぶしくないように、画面の明るさを調整しておくとよいでしょう。

他の製品は ›› モバイル製品情報

モバイル製品情報

寒さ対策を万全に

寒さ対策は、ふたご座流星群の観察で一番大切なことといえるかもしれません。寒いと注意力や判断力が低下し、落ち着いて空を見上げるのが難しくなったり動作が鈍って思わぬ事故につながったりすることもあります。

  • 重ね着をし、帽子やマフラー、手袋などの防寒具も
  • 携帯カイロ、夜食、温かい飲み物なども準備
  • 家の近くで見るのであれば、無理をせず時々室内で休憩を
  • ヒーター等を利用の場合は明かりや音、安全に気をつけて

そのほかのポイント

  • 流れ星を観察するために長時間夜空を見上げ続けていると首が痛くなります。アウトドア用のチェアやベッドがあればベストですが、グラウンドシートに寝転がって見るのも快適です
  • 大騒ぎしない、車や足元に注意する、子供だけで行動しないなど、マナーや安全にもじゅうぶん気をつけましょう

ソラリラ(星空ベッド)

ベッドに寝転んで観察すれば楽に広い範囲を見渡せます
(画像はビクセン「ソラリラII(星座観察ベッド)」)

観察や撮影にあると便利なグッズ

□
ソラリラII

折りたたみ式の星空ベッド。楽な姿勢で空を眺められます

□
折りたたみ
星座クッション

座って星空を眺めるときに便利なクッション

デジタル一眼レフやミラーレス一眼で流星撮影にチャレンジ。「ポラリエ」や「NEW ナノ・トラッカー」も

カメラレンズの結露を防止する電熱線式ヒーター

流れ星が見えるしくみ

ふたご座流星群とは

一年のうちある決まった時期に、星空の中のある点の付近を中心として流れ星が飛ぶ現象が流星群です。流星群は現在100個近くが知られていますが、ふたご座流星群はしぶんぎ座流星群(1月4日ごろ)、ペルセウス座流星群(8月13日ごろ)とともに「三大流星群」の一つとして数えられる、活動が活発な流星群です。

ふたご座流星群は、毎年12月14日前後に流れ星が飛びます。活動が安定しており、ほぼ期待どおりに多くの流れ星を見ることができます。「夜が長い」「放射点が一晩中地平線上にあり、深夜に高く上る」ということもあり、寒さを別とすれば一年で最も見やすい流星群といえます。

2014年のふたご座流星群

ふたご座流星群。2014年12月14日 伊豆大島にて(撮影:大熊正美)。クリックで拡大

ダイジェスト動画

放射点

流星群の流れ星は、天球上のある点の付近を中心として四方八方に放射状に流れるように見えます。この点を「放射点」と呼びます。流星群の名前は放射点のある(または放射点の近くの)星座や恒星の名称が付けられます。ふたご座流星群の場合は、ふたご座の2等星カストルのすぐそばに放射点があるので、この名前で呼ばれています。

実は平行に降る、流星群の流れ星

流れ星(流星)は、宇宙空間に散らばっている小さな塵(流星物質)が地球の大気圏に飛び込んで大気中の原子や分子と衝突し、上空100km前後でプラズマ発光する現象です。

平行に降る流れ星

平行に降る流れ星。クリックで拡大

地球が塵の集まりとぶつかると、流星群の流れ星は雨のように平行に降ります。平行に飛び込んでくる流れ星が放射点を中心として放射状に流れるように見えるのは、一直線の道路の両端が遠方の一点から伸びてきているように見えるのと同じ理由です。

流れ星の見かけの動きは、放射点付近では経路が短く、放射点から離れるほど経路が長く見えます。とくに放射点では、流れ星は観察者に向かってくるように見えます。

流れ星の実際の動きと見かけの動き

流れ星の実際の動きと見かけの動き。クリックで拡大

ふたご座流星群の起源

塵を放出して流星群の原因となる天体を母天体と呼びます。この母天体の軌道と地球の軌道が交差していると、毎年決まった時期に地球がそこを通る際に、塵の集まりと地球がぶつかることになります。したがって、毎年同じころに同じ方向から飛んでくる流れ星が見られることになるのです。

母天体は、多くの場合は彗星ですが、ふたご座流星群の場合は約1.4年周期で太陽系を巡っている小惑星ファエトン((3200) Phaethon)と考えられています。小惑星は彗星のように尾をたなびかせ塵を放出することはありません。反対に考えると、ふたご座流星群の母天体がファエトンであるとすれば、かつてファエトンは彗星であったかもしれないということになります。

塵が多く(濃く)集まっていれば流れ星の数も増えますが、ふたご座流星群の場合、塵はファエトンの軌道上の一部に偏在しているのではなく、軌道全体に広がって分布していると考えられます。塵もファエトンと同じ軌道を運動しているので、毎年のように多くの塵と地球とがぶつかることになり、ふたご座流星群の流れ星はファエトンの位置に関わらず毎年多く見られるのです。

流星群とファエトンの関係

流星群とファエトンの関係。クリックで拡大