小惑星イトカワの帰還サンプルに見られる微小クレーター

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小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った「イトカワ」のサンプル分析で、1つの粒子に多数の微小クレーターが見つかった。イトカワ表面で天体衝突が起こった時に発生した微小破片により作られた二次クレーターだという。

【2016年9月8日 ISAS

独・フリードリヒ・シラー大学イェーナのDennis Harriesさんたちの国際研究チームは、探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から採取し2010年に地球に持ち帰ってきたサンプルを詳細に観察し、大きさが1μm以下の微小クレーターをサンプルの表面に多数発見した。

イトカワ微粒子表面の微小クレーター
イトカワ微粒子表面の微小クレーター(矢印の先)(提供:ISAS/JAXA)

微小クレーターには鉄ニッケル合金の破片がべったりとくっついており、これは鉄ニッケル合金の破片が高速で飛んできてクレーターが作られたことを示している。しかし、イトカワには鉄ニッケル合金の大きな塊は存在しないので、鉄ニッケル合金を多く含む天体がイトカワに衝突し、その破片によって二次的に微小クレーターができたと考えられる。

これまで、微小クレーターの存在は、微粒子が1万年以上の長時間イトカワ表面に露出していたことを示していると考えられてきた。しかし今回の研究で、表面露出時間が1000年以下の粒子にも二次クレーターとして存在していることがわかった。こうした衝突現象はイトカワ表面の反射スペクトルを変化させるため、イトカワの宇宙風化を進行させる一つの大きなメカニズムであると考えられる。

今後、より多くの微小クレーターを詳しく調べることで、極微小な天体の組成やサイズ分布に対しても重要な手がかりを得ることができると期待される。「微小な天体の組成やサイズ分布がわかると、地球に飛来する隕石と宇宙塵の組成が異なっているという疑問を解決できるかもしれません。隕石は普通コンドライトが大半を占めていますが、地球の成層圏で回収された宇宙塵には含水鉱物を含む炭素質コンドライトに似たものの割合が多く、サイズによって組成が変わっています。こうした違いは地球に降ってきた物に限られるのか、それとも太陽系全般でそうなっているのかは、太陽系(小惑星)の岩石物質全体の化学組成にも影響する問題なのです」(共同研究者 上椙真之さん)。

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