彗星表面の直接探査に成功 大任果たしフィラエ冬眠
【2014年11月17日 ヨーロッパ宇宙機関 (1)/(2)】
彗星探査機「ロゼッタ」からチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)の表面に投下された着陸機「フィラエ」は、当初予定されていた着地点からバウンドして、およそ1km離れた日陰の多い場所に留まっていることが判明した。予定通りの地点に着陸することができていれば、彗星の自転周期である12時間のうち7時間の日照が得られるはずだったが、現在地では1時間半しか太陽光が当たらず、太陽電池パネルによる発電量がじゅうぶん確保できない。
1次バッテリーの電力が尽きるまでの時間との戦いの中、表面付近のガスや地表物質のデータ取得が休みなく行われた。不安定な機体がひっくり返るリスクを承知で行ったサンプル採取用ドリルの稼働や、太陽光が少しでも当たりやすくするための姿勢の修正などの操作も無事完了し、史上初めて彗星核で直接得られた観測データを全て地球に送り届けた後、フィラエは15日午前(日本時間)に通信を絶った。
フィラエに搭載された観測装置(提供:ESA/ATG medialab)
フィラエは電力が尽きて冬眠モードに入ったとみられるが、母船ロゼッタが彗星上空20~30kmから行う観測のかたわら、今後も継続的に呼びかけを試みる。少しずつの充電、あるいは来年8月の太陽最接近に向けて今いる場所に太陽光が多く当たるようになることでじゅうぶんな電力を得て、再び目を覚ましてくれるのを待ちたい。
フィラエ担当のStephan Ulamecさんは、「ミッションは大成功で、チームはみんな喜んでいます。(バウンドして)3度の着陸という予定外のことがあったが、装置は全て無事動かすことができました。取得したデータをこれから分析するのが楽しみです」と語っている。
ロゼッタから見たフィラエの最初の着陸のようす。着陸1分半後の画像では地表に着地の痕ができており、やや右側にはバウンドしたフィラエの機体とその影が見える(提供:ESA/Rosetta/NAVCAM - CC BY-SA IGO 3.0)
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の位置と軌道
天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、彗星の設定日時における位置を表示することができます。
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