ホットジュピターがひとりぼっちな理由

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【2013年11月7日 国立天文台天文シミュレーションプロジェクト

太陽系外の巨大ガス惑星のすぐそばに他の惑星が見つからない理由に関して、名古屋大学のシミュレーション研究により新たなプロセスが浮かび上がった。惑星系形成に関する「第3のシナリオ」を推し進める成果としても注目される。


地球型惑星によって押しやられるホットジュピター

巨大なホットジュピター(茶)が地球型惑星によって恒星(オレンジ)の方に押しやられる。クリックで拡大(提供:宮本アシタ/荻原正博/名古屋大学)

ホットジュピターと地球型惑星の形成プロセス

(左)惑星の材料が多いと、大きい地球型惑星が形成され、ホットジュピターが追いやられる(右)惑星の材料が少ないと、観測できないサイズの地球型惑星が形成され、残ったホットジュピターだけが見つかる。クリックで拡大(提供:荻原正博/名古屋大学)

これまでの系外惑星観測により複数の惑星が存在する恒星も多く見つかっているが、「ホットジュピター(恒星の極めて近くにある巨大ガス惑星)のそばには他の惑星が観測されない」という観測的特徴が明らかになってきた。従来の主流となっている惑星系形成の理論モデルでは、どうしてこのような特徴が起こりうるのか説明ができない。

名古屋大学大学院理学研究科の荻原正博さんらによるコンピュータシミュレーション研究から、ホットジュピターは外側にできた地球型惑星によって内側に追いやられ、最終的には恒星と衝突して飲み込まれるというメカニズムが新たに見つかった。ホットジュピターのすぐ外側の軌道には惑星の材料が集まりやすくなり惑星の形成を促進するのだが、そうして生まれた惑星に追いやられてしまうとは少々皮肉な話である。

もし外側にできた惑星が火星以下のサイズの場合には、ホットジュピターが内側に押しやられることはないが、外の惑星は小さすぎて観測されないので、ホットジュピターのみが見つかることになるという。

この結果は、観測的な謎への解決案を提示したという直接的な成果だけでなく、名古屋大学の犬塚修一郎さんが2009年に提唱した新しい惑星系形成シナリオの有用性を初めて実証したものともなった。惑星系形成の研究の新たな展開を切り開く成果として期待される。