ブラックホールに落ち込むガスの急激な加熱 100分の1秒で10億度以上に

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【2013年4月8日 理化学研究所

理化学研究所などの研究グループがX線天文衛星「すざく」による観測で、ブラックホール候補天体に落ち込む間際の高温ガスがわずか100分の1秒で10億度以上にまで加熱され、高エネルギーのX線を放射する様子をとらえた。ブラックホールの直接的な証明に一歩近づく発見となる。


はくちょう座 X-1

「はくちょう座 X-1」ブラックホール連星の想像図(提供:発表資料より)

強力な重力のため、光さえも飲み込んでしまうという暗黒の天体「ブラックホール」。その存在について状況証拠は数多く集まってきたものの、実は今でも直接的な観測証拠は得られていない。

理化学研究所仁科加速器研究センターの山田真也さんらの研究グループは、約6000光年彼方のブラックホール候補天体「はくちょう座X-1」をX線衛星「すざく」で観測した。

「はくちょう座X-1」は1971年にX線で明るく光る不思議な天体として発見され、X線の強さが秒以下の短い時間で変動することや、太陽の数倍以上の質量を持つことからブラックホール候補天体となった。ブラックホールがそのパートナーの恒星から重力で引き込んだガスが高温になり、X線を放射していると考えられる。

今回の観測では、高温ガスがブラックホールに落ち込む最後の100分の1秒に10億度以上にまで急激に加熱されることが新たにわかった。ブラックホールほどではないが同じく高密度天体である中性子星などのように表面を持つ天体の場合、数千万度の天体表面からの強い放射が落ち込むガスを効率よく冷やすので、ここまで急激にガスが加熱されることはない。ということは、はくちょう座X-1に存在するのは表面を持たない天体、つまりブラックホールということを示唆しており、ブラックホールの直接的な証明に一歩近づいたことになる。


「ステラナビゲータ」ではくちょう座X-1を表示

天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」で以下の操作をすると、はくちょう座X-1の位置にマークと名称が表示されます。

  1. 「天体」メニューから「星雲・星団」ダイアログを表示
  2. 「X線源」の「名称」「表示」のチェックをオンにする