衝突確率ゼロに向け、接近小惑星を精密観測

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【2013年1月10日 NASA (1)(2)ESA1月11日更新

2036年に地球に衝突する可能性がわずかに残る小惑星アポフィスが9日、地球から約1450万kmの距離を通過した。赤外線天文衛星などにより、その軌道を精密に予測するための観測が行われている。


小惑星アポフィスの赤外線画像

天文衛星「ハーシェル」が今回の接近で撮影した小惑星アポフィス。左から波長70μm、100μm、160μmの赤外線でとらえている。クリックで拡大(提供:ESA/Herschel/PACS/MACH-11/MPE/ESAC)

小惑星アポフィスの軌道

アポフィスの軌道。323.5日周期で地球に近い軌道を回る。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

アポフィス((99942) Apophis)は2004年に発見された小惑星で、2029年に地球に衝突する可能性がわずかにあるとして話題になった。1月9日(世界時)には、地球から約1450万kmの距離まで最接近した。

こうした天体は、発見当初は軌道が不確実なため、衝突の可能性がわずかにあるとされることがある。しかし何度か追観測を行って軌道を精度よく絞り込んでいくと、そのうち確率がゼロであるとわかる。

アポフィスの場合、2029年の最接近時には地球表面から約3万kmの距離を通ることが、発見後の観測や過去の観測でとらえられていたデータからわかっている(参考:地球の直径は約12,700km)。2036年の最接近で衝突する可能性はわずかに残っているが、今回の接近の観測結果から2036年の衝突の可能性もなくなるかもしれない。

欧州の天文衛星「ハーシェル」も、最接近直前の1月5日〜6日にアポフィスを観測した。2時間にわたって複数の赤外線波長で得たデータを可視光観測と合わせたところ、アポフィスの平均直径はこれまで推測された270±60mからやや大きい325±15mに修正された。また、温度データから、天体表面の太陽光反射能も新たに見積もられた。太陽光による温度の上昇も長いスパンで軌道に影響するので、これも大事な要素だ(参照:2012/5/31「太陽光で小惑星が動く「ヤルコフスキー効果」を精密測定」)。

「かつて地球への脅威として話題となったアポフィスは今はほぼ危険性がないと考えられていますが、地球近傍小惑星を知るのに役立つ興味深い対象であることには変わりありません」(ハーシェル研究員のGöran Pilbrattさん)

1月11日追記

NASAは1月10日付で、米3施設による新データおよび今回の接近の観測から、アポフィスが2036年に衝突する可能性は事実上消滅したと言えるほどに小さくなったと発表した。

今年2月半ばには、40mサイズの小惑星2012 DA14が28,000km未満まで接近通過するという。


ステラナビゲータで小惑星アポフィスを表示

小惑星アポフィスを天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して軌道や位置を確認できます。ご利用の方は、「天体」メニュー→「小惑星」ダイアログで「Apophis」を検索して選択し、上矢印(↑)で表示するよう設定してください。

「ツール」メニューから「データ更新」を行うと、小惑星、彗星などの天体データを更新します。