火星の砂嵐を地表と上空から同時観測

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【2012年11月27日 NASA

火星で巻き起こる砂嵐は、地表の探査車の活動にも影響する。上空の周回機と探査車が砂嵐の領域とそれによる変化について共同で観測を行っている。


火星の砂嵐

MROがとらえた火星の南半球の砂嵐(中央下部の白い三角で囲まれた明るい領域)。「オポチュニティ」(左)と「キュリオシティ」(右)の現在地を白い円で示している。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/MSSS)

火星周回機「マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)」は11月10日から南半球の砂嵐を追跡監視している。MROのデータでは、砂嵐の25km上空の気温が11月16日以来25度も上昇していた。これはその高度にある塵が太陽光を吸収したためで、塵が上空に巻き上げられ、風で広がって「もや」となっていることがわかる。

南半球だけでなく北半球の極域でも、大気循環によって一部局地的な気温上昇が見られる。塵のもやから離れたところにある探査車「キュリオシティ」がとらえた気圧の低下なども、同様の変化によるものだ。

MROは砂嵐の状況を、約1400km離れたところで活動しているもう1つの探査車「オポチュニティ」に連絡した。砂嵐はそれ以上接近せず、オポチュニティの視界がやや曇った以外には影響は出ていない。

もし砂嵐が火星の全球に広がっていたら大気中のダストが増え、オポチュニティの太陽光発電パネルに砂が落ちて大きな影響が出ていただろう。キュリオシティは放射性同位体熱電気転換器という発電装置から主な電力を得ているため動力の面での影響はないが、気温上昇の影響や撮影画像の画質低下は問題になるだろう。火星探査車の運用のためにも、砂嵐を監視する必要があるのだ。

数十年にわたる火星探査から、火星最大の砂嵐には季節的周期があることがわかっている。現在の砂嵐の季節は、今から数週間前に南半球の春の到来とともに始まった。

「今回のサイズの砂嵐は、このまま成長が止まるのもあれば、全球的規模まで成長するものもあります。どこでこのような違いが生まれるのかというのも、我々が知りたいことの1つです」(NASAジェット推進研究所のRich Zurekさん)。