ある?ない?やっぱりある? フォーマルハウトの惑星

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【2012年10月30日 NASA

秋の南の空で輝くみなみのうお座の1等星、フォーマルハウト。その周囲の塵の環の中に見えるのは、惑星か否か。「初の系外惑星直接撮影」に関わる議論に“二転”目を繰り出す研究成果が発表された。


フォーマルハウトの位置

みなみのうお座の方向25光年先にあるフォーマルハウトは、秋の南の空でぽつんと輝く1等星だ。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

フォーマルハウトと周囲の環

2006年にハッブル宇宙望遠鏡で撮影したフォーマルハウト周囲のようす。右下にフォーマルハウトbが見える。クリックで拡大(提供:NASA/ESA/T. Currie, U. Toronto)

2008年11月、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したフォーマルハウト周囲の塵の環(ダストリング)の中に惑星らしき天体がとらえられ、「系外惑星を直接撮影した世界初の例」として話題になった。

「フォーマルハウトb」と符号が付けられたこの天体の正体に疑問を投げかけたのが、今年1月の発表だ。この天体からの赤外線をとらえられなかったことなどから、フォーマルハウトbは惑星ではなく一時的に現れた塵の雲だという主張である。

しかし今回、トロント大学のThayne Currieさんらがそれを再度覆す研究成果を発表した。研究では、ハッブルによる2004年と2006年のデータを再度解析し直した。その結果、1月の発表のみならず、2008年の最初の発表についても(惑星の存在を是とする結論以外は)根本的に見直されることとなった。

たとえば、フォーマルハウトbの明るさの変化について、最初の発表ではこれが惑星である証拠とし、反論の発表では逆に、塵の雲である証拠としていた。だが今回の研究では、この天体がそもそも一定の明るさであることが示されている。

また、ハワイのすばる望遠鏡での観測も行ったが、やはり赤外線では見つからなかった。このことから、天体は予想よりはるかに小さい、木星の2倍以下の質量しかなく、その小ささのために見当たらないだけではと考えられる。

もうひとつのポイントは、惑星の軌道だ。フォーマルハウト周囲に広がる塵の環の位置や形状は惑星の重力によって影響を受けているという説に対し、惑星の軌道が環からずれている、公転速度が速すぎる、といった指摘があった。だが、今回の研究で得られた惑星の軌道とその速度は、最初の説に合致するものだった。

さらに、「フォーマルハウトbは惑星と重力作用しない小さな塵の雲である」という仮説を立て検証を行ったが、そうした雲は重力や恒星からの放射によりすぐに消えてしまうであろうことがわかった。

「周囲の塵の存在など環境条件を総合すると、浮遊している塵の雲というよりも、塵にすっぽり包まれた惑星と考えられます」(宇宙望遠鏡科学研究所のJohn Debesさん)。

この発表内容が正しいとすると、検出された光は惑星の大気ではなく、周囲の塵のもの、つまり「世界初の直接撮像ではなかった」ということになる。だが、環を整形する天体としてちょうどよい位置と質量であり、「直接撮像から存在がわかった初めての惑星」と言えるだろうと研究チームでは考えている。

ハッブル宇宙望遠鏡によるフォーマルハウトの観測は今年5月にも行われている。そのデータから、また新たなことがわかるかもしれない。