板垣さん、櫻井さんがいて座に新星を発見

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【2012年7月3日 VSOLJニュース(288)】

6月26日(世界時)、山形の板垣公一さんがいて座の方向に新星を発見した。茨城の櫻井幸夫さんも同一の天体を独立に発見している。


VSOLJニュースより(288)

著者:前原裕之さん(京都大学花山天文台)

いて座の新星

黄色いマークの箇所がいて座の新星。クリックで広域表示(撮影:遊佐徹さん)

6月〜7月にかけては、新星が多く発見される領域、天の川のなかでも私たちの銀河系の中心方向の近くが観測しやすい時期です。しかし、日本の多くの地域ではこの時期は梅雨になるため、なかなか星を見る機会がありません。その銀河系の中心方向に近い、いて座とへびつかい座の境界付近に、10等級の新星が発見されました。

新星を発見したのは、これまでに多数の超新星を発見されていることで有名な、山形県の板垣公一さんです。板垣さんは6月26.5494日(世界時、以下同様)に口径21cmの反射望遠鏡とCCDカメラを用いて撮影した画像から、10.2等級の新天体を発見し、その直後に口径60cmの反射望遠鏡でこの天体を確認しました。この天体は茨城県の櫻井幸夫さんによっても、26.540日に撮影された画像から9.9等で独立に発見が報告されています。この天体の位置は以下の通りです。

  赤経  17時52分25.79秒
  赤緯 -21度26分21.5 秒(2000.0年分点)
  いて座の新星の周辺星図

干潟星雲M8から、北西に約4度ほどの位置になります。この天体の存在は、宮城県の遊佐徹さんや茨城県の清田誠一郎さんなど多数の観測者が確認観測を行いました。この天体は27.355日にはV等級で9.8等でしたが、28.307日には11.0等、28.614日には11.2等と、発見の1日後から急速に暗くなっている様子が観測されています。

また、Konkoly Observatory(ハンガリー)のKissさんらのグループ、岡山県の藤井さん、岡山理科大の今村さん、筆者、フランスのBuilさん、Padova天文台(イタリア)のMunariさんがそれぞれ分光観測を行いました。

発見直後の26.95日に行われたKissさんによる分光観測では、特に目立った輝線はなく、星間物質によるナトリウムD線の強い吸収が見られただけでしたが、28日の藤井さん、今村さん、筆者、Builさん、Munariさんの観測では、幅が広く強い水素のバルマー輝線のほか、中性のヘリウム、酸素などの輝線が見られました。

Hα輝線の幅は秒速4000-4500kmで、この新星は爆発によって膨張する物質の速度が比較的大きい新星であることが判明しました。膨張速度が大きい新星は急速に暗くなってしまうものが多いことが知られています。実際27日以降には急速な減光を示していることが報告されており、今後の明るさやスペクトルの変化が注目されます。


いて座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後まず「ツール」メニューから「データ更新」を行い、新天体データを取得してください。

また、新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。

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