太陽系最大のクレーターに潜む巨大湖の痕跡

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【2012年4月9日 Universe Today

火星の南半球にある巨大なヘラス盆地は、太陽系最大規模のクレーターでもある。このヘラス盆地にある様々な地形の形成に、火星の水が密接に関係していることを示す観測結果がNASAの探査機によって得られた。


ヘラス盆地にあるラバランプのような地形

ヘラス盆地にあるラバランプのような地形は、実は氷によって作られたのかもしれない。クリックで拡大(提供:University of Arizona)

ヘラス盆地の帯状の地形

帯状の地形の例。比較的明確に見えるものと左側の古い地形が対照的である。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Arizona/N. Thomas et al.)

火星の表面で「もっとも奇妙で、もっとも謎の多い」巨大なヘラス衝突盆地(ヘラス平原)。そこには、過去に何らかの大きな地質学的過程があったことを示す、何かが流れた跡のような地形がある。引き伸ばされ歪められてラバランプのようになったこの地形を、NASAの火星探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」(MRO)がとらえた(画像)。

直径が2,300kmもあるヘラス盆地は太陽系最大規模の衝突クレーターとされており、最深部は火星の平均面からおよそ7,200mも下にある。霧や塵に覆われているときが多いため、底を上空からとらえるのは難しい。

「ラバランプ」地形はヘラス盆地にある多様な地形の一つであるが、これらの帯状地形はヘラス盆地の北西部、もっとも深い場所に集中している。過去の火星に水があったとしたら、水がたまっていたはずの場所だ。一見、火山活動によって作られたようにも見えるが、実際は水や氷の流れによって作られたと考えられる。

ヘラス盆地がどのようにして今のようなスムーズな形になってきたのかについて、現在活発な研究が行われている。

「この地域からは非常に興味深い画像がたくさん得られました。我々はここで今起こっていること、そして今見えている数多くの奇妙な地形がどのような過程で作られたかを解明するために、より多くのデータを取ろうとしています。今後の数か月間、探査が無事に続けられることを望んでいます」(スイス・ベルン大学のNicolas Thomas氏)。

ヘラス盆地の帯状地形が水や氷によって作られたという仮説は、過去のヘラス盆地に巨大な湖があった可能性ともつながっている。

「様々な場所を観測してきた結果と明確なカルデラがないことから、これらの地形が火山によるものだとは考えにくいですね。我々は現在、氷の存在を考慮に入れたメカニズムを使って研究を進めています」(Thomas氏)。