国立天文台の田村准教授に林忠四郎賞 系外惑星の直接観測

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【2012年3月22日 日本天文学会】

日本天文学会の2011年度林忠四郎賞が、国立天文台の田村元秀准教授に授与された。太陽系外惑星の直接観測による系統的研究への貢献が評価されたものだ。


2011年度林忠四郎賞が、系外惑星円盤の撮像などで顕著な功績を挙げた国立天文台の田村元秀(たむらもとひで)准教授に贈られることが決まった。同賞は、広い意味での天文学の分野において、独創的でかつ分野に寄与するところの大きい研究業績をあげた個人やグループに対して贈られるものだ。

太陽以外の恒星の周りを回る系外惑星は現在までに700個以上が検出されているが、その発見のほとんどが、主星の明るさの変化や動きを見るという間接的な手法によるものである。明るい恒星に比べて伴星である惑星は非常に暗いため観測が難しい、というのが主な理由だ。

田村准教授は、系外惑星およびその誕生現場となる原始惑星系円盤の観測のため、すばる望遠鏡に取り付けるコロナグラフ(主星からの光を隠し、周囲の円盤を見えやすくする装置)を独自に開発した。すばるの補償光学システム(観測の邪魔となる大気のゆらぎを補正する)と組み合わせて高コントラストの観測を実現することで、世界で初めて系外惑星の直接撮像に成功し、その他にも多様な原始惑星系円盤の姿を示した。

さらに、惑星形成時にできると考えられる円盤内側の溝状構造から惑星の存在を明らかにするなど、多くの成果を挙げた。

代表的な業績は以下のとおり。

  • すばる望遠鏡用に、8mクラス望遠鏡で唯一の専用コロナグラフ「CIAO」と後継の「HiCIAO」を開発し、すばる望遠鏡の補償光学システムと組み合わせて、高コントラストで系外惑星や星周円盤を直接撮像できるシステムを構築した。
  • 系外惑星系円盤の形態の多様性と普遍性を世界で始めて直接観測で示した。また、原始惑星系円盤のギャップ(隙間)など詳細構造の直接撮像にも成功している。高解像で見たギャップは明確な境界を持ち、惑星の存在によるクリアリング(clearing、物がなくなってきれいになること)の可能性が高いことを示している。これらの結果は惑星系形成理論にも大きな影響を与えている。
  • 太陽型星(G型星)を回る巨大系外惑星GJ 758Bの直接観測に成功。その温度は600Kくらいと推定され、撮像されたG型星の伴星天体の温度としては最低記録となる。惑星と主星までの見かけの距離は29AUしかなく、ほぼ海王星の軌道半径と同じであり、太陽系サイズの惑星系と考えられる。このような巨大惑星を海王星の距離に形成するのは現存する理論モデルでは説明が難しいため、とてもユニークなものである。

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