隕石から判明した小惑星の形成時期と水の存在

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【2012年1月19日 東京大学理学系研究科

東京大学の研究により、太陽系の初期に形成した隕石の炭酸塩は太陽系の形成から480万年後にでき、これらの隕石の素になった小惑星は太陽系の形成から350万年後にできたことがわかった。


分析した炭酸塩の電子顕微鏡写真

分析した炭酸塩の電子顕微鏡写真。中央のやや暗い色の鉱物が炭酸塩。画角は0.2mm四方(提供:東京大学。以下同)

先行研究の年代と今回得られた年代

先行研究の年代(□)と今回得られた年代(■)。誤差の範囲内でグレーの帯の幅で年代が一致していることがわかる

探査機「はやぶさ」で注目を浴びたように、小惑星には太陽系初期の情報が残っているのではないかと考えられており、これら小惑星の「断片」と考えられている隕石を用いた初期太陽系の研究が進められている。とくに炭素質コンドライトと呼ばれる隕石は、形成してから大きな加熱を経験していないために初期太陽系の姿をよく残していると考えられている。

この炭素質コンドライトの中には、小惑星の水がある環境下で形成したと考えられる炭酸塩鉱物を含むものがある。この炭酸塩鉱物の中でも微量のマンガンを含んでいるものは、初期太陽系には存在していた半減期370万年の53Mn(マンガン)が53Cr(クロム)へと壊変することを利用した年代測定を行うことができる。

この測定はこれまでにも行われていたが、正しく年代を測定するために不可欠な、対象鉱物と同じ鉱物の標準試料が用いられていなかった。クロムを含む炭酸塩が天然に産出しないため、標準試料となる鉱物が得られなかったからだ。

今回、東京大学の研究チームはクロムとマンガンを含む炭酸塩を人工的に合成することで問題を解決した。これまで、正確でない標準試料を用いて得られた年代は大きくばらついていたが(画像2枚目)、人工合成した炭酸塩を試料として4つの隕石について年代を測定した結果、誤差の範囲内で年代が一致した。これらの炭酸塩が形成されたのは、太陽系形成から約480万年後ということになる。

では、このような炭酸塩が形成されたのはどのような環境だったのだろうか。炭酸塩が形成されるには、母天体となった小惑星の形成が早すぎても大きすぎても、また形成が遅すぎても小さすぎてもいけない。これは炭酸塩が形成された年代に、炭酸塩が形成するような絶妙な温度を再現する条件が厳しいためだ。研究チームは太陽系形成から480万年後に炭酸塩が形成される条件について計算機を用いたシミュレーションを行った。その結果、太陽系の形成から350万年後に母天体となった小惑星が形成されたことがわかった。

この研究の成果により、より正確な太陽系初期の年代学が築かれ、初めて水を含む小惑星の形成と進化に関する正しい時間的な描像が得られた。このような小惑星の形成期間は、その後の惑星形成の理論などに大きな影響を与えることが予想され、今後の研究が期待される。