徐々に小さくなっている? 木星のコア

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【2011年12月21日 Science Now

最新の計算結果によると、木星内部のコアはその周囲に「溶け出して」いる可能性があることがわかった。どのくらいの割合で溶け出ているのかはよくわかっていないが、木星の形成当初は現在よりもコアのサイズが大きかった可能性がある。


「ボイジャー2号」が撮影した木星

1979年に「ボイジャー2号」が撮影した木星(提供:Voyager 2/NASA/JPL/USGS)

木星の中心には地球の重さのおよそ10倍にもなる金属や岩石、氷などでできたコアがあり、その周囲には強大な重力によって金属化した水素、さらにその外側に水素やヘリウムが存在している。

今回アメリカの研究チームは、木星のコアの岩石を構成する主要成分である酸化マグネシウム(MgO)が、惑星の中心部でヘリウムや水素と混じったときに何が起こるのかを調べた。木星の中心部の温度はおよそ1万6000度、圧力は4000万気圧と途方もなく大きなものと推定されており、実験室での再現実験ができない。そのため、量子力学的計算という手法を用いて、計算機によるシミュレーションを行った。

計算の結果、酸化マグネシウムは非常に溶けやすいことがわかった。これはつまり、木星の金属・岩石コアがその周囲を取り巻く液体の水素やヘリウムに溶け出していることを意味する。溶け出ている割合はよくわからないものの、現在の木星のコアのサイズは形成初期と比較すると小さくなっているかもしれない。

この研究結果は、木星が形成されてから現在に至るまで、その姿がどう変わってきたのかを探る上で非常に重要なものだ。2016年には探査機「ジュノー」が木星の周回軌道に入り、現在の木星内部の情報を得ることができると期待される。

一方で大きな謎も1つ残っている。木星内部での対流が強いかどうかということだ。もし溶け出たコアが外側のエンベロープと呼ばれる領域に運ばれるほど強い対流があれば、コアのサイズは誕生時と比較して小さくなっているだろう。しかし対流がそれほど強くない場合、溶け出たコアの成分はコアとマントルの境界にとどまることになる。もっとも、この場合でもコアとマントルの境界は、これまで考えられていたようなはっきりとした境界を作っていない可能性がある。

この研究結果は木星だけではなく、系外惑星にも適用できそうだ。系外惑星には木星よりも巨大な惑星が数多く見つかっており、その内部は木星よりも高温であることが予想される。高温になればなるほどコアが溶け出す速度は速くなるため、もしかしたら多くの系外惑星には岩石や金属でできたコアは存在していないかもしれない。