ISSの観測装置「MAXI」、スーパーX線バーストを検出

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【2011年11月9日 MAXIサイエンスニュース

国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟に設置されているX線監視装置「MAXI」が、スーパーX線バーストという現象をとらえることに成功した。まだ観測例が20例足らずしかない珍しい現象で、今回の発見によりスーパーX線バーストがX線新星の活動に大きな影響を与えていることがわかった。


スーパーX線バーストの想像図

スーパーX線バーストが起きる連星の想像図。恒星(右)からのガスが中性子星(左)に降着して爆発が起きる。クリックで拡大(提供:Jean in 't Zand(SRON))

スーパーX線バーストと通常のアウトバーストが連続して起こっている様子

横軸が時間、縦軸がX線強度の図。10月24日21時(日本時間)に急激にX線強度が増加するスーパーX線バーストが発生した後、ゆっくりX線強度が増加するアウトバーストが発生しているのがわかる。クリックで拡大(提供:JAXA/RIKEN/MAXI-Team)

国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置されている全天X線監視装置「MAXI」が10月23日、銀河系中心方向にある「ターザン5」という球状星団から巨大なX線バーストを検出した。

このスーパーX線バーストは球状星団の中にある、中性子星と太陽より少し小さい恒星との連星「EXO 1745-248」から発生していることがわかった。EXO 1745-248は過去にX線の増光を繰り返し起こしていることが知られていたが、スーパーX線バーストが発見されたのは初めてだ。

中性子星と軽い星の連星系では、中性子星に落ちてきた水素やヘリウムのガスが一気に核融合を起こすことでX線を放ち、核融合でできたヘリウムや炭素が中性子星の表面に溜まっていくことが知られている。この現象をX線バーストと呼んでいるが、X線バーストでできた炭素が燃料となって核融合が起きると、表面が約2000万度まで加熱されスーパーX線バーストが起きると考えられている。同じ天体では数年から数十年に一度の頻度でしか起きない珍しい現象であるため、現在までに観測例は20個足らずしか報告されていない。

今回のスーパーX線バーストでは、その増光が収まった直後に、ゆっくりとX線強度が増加しているのが確認された。これはガスが中性子星の表面に落ちてくることで発生するX線のアウトバーストだと考えられる。アウトバーストが不規則に起きることはすでに知られていたが、アウトバーストとスーパーX線バーストが同時にとらえられたのは今回が初めてで、X線天体の爆発現象の解明の大きな手がかりとなりそうだ。