すばる望遠鏡、惑星と恒星のはざまを繋ぐ:木星のわずか6倍の浮遊惑星も直接観測

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【2011年10月13日 すばる望遠鏡

国立天文台をはじめとした国際共同チームが、「すばる望遠鏡」による観測で2つの若い星団から褐色矮星を約30個発見した。褐色矮星は惑星と恒星の中間程度の質量を持つ天体だが、今回の発見は星団の中でどのような天体がどれくらい作られているのか、疑問を投げかけそうだ。


「NGC 1333」における褐色矮星と浮遊惑星

NGC 1333における褐色矮星と浮遊惑星。白丸は既に知られていた褐色矮星や浮遊惑星で、黄丸が今回新たに発見されたもの。6MJupという丸は木星の6倍程度の質量を持つ天体の場所を示している。クリックで拡大(提供:SONYCチーム、国立天文台すばる望遠鏡。以下同)

褐色矮星のスペクトル

典型的な褐色矮星のスペクトル。絶対温度で3000度から2200度にかけて1670nmの付近に、大気中の水蒸気(water)による吸収によってスペクトル強度の変化が見えているのがわかる。

褐色矮星とは「恒星になれなかった星」とも言われ、質量が足りないために軽水素の核融合でエネルギーを生み出して光ることができず、形成されたときの余熱で光り、徐々に暗くなっていく天体を指す。大気組成は惑星の大気とそっくりになるが、惑星が恒星の原始惑星系円盤から作られるのに対し、褐色矮星は他の恒星と同じくガスとちりの雲が収縮して独立して生まれると考えれており、形成過程は異なる。

今回の成果は、恒星よりも軽い天体を調べ上げていくプロジェクト「SONYC」の一環として生まれたものだ。プロジェクトチームは、ペルセウス座のNGC 1333の星団とへびつかい座ρ(ロー)星の周りにある星団について、ハワイにある「すばる望遠鏡」とチリにある「VLT」を用いて観測を行った。どちらも誕生後100万年程度という非常に若い星団だ。

まず、すばる望遠鏡の広い視野を生かして、これらの星団の中で非常に赤い星を探し出し、その後すばる望遠鏡とVLTを用いた分光観測()によって褐色矮星を見つけだしていった。

その結果、約30個の褐色矮星を発見することに成功した。特にNGC 1333の星団中で発見された天体には、木星質量の6倍程度という、質量だけ見ると太陽系外の巨大惑星と大して変わらない天体も発見された。しかし、この天体は恒星の周りを回っておらず、このような「浮遊惑星」がどのように出来たのかはまだよくわかっていない。

さらに、NGC 1333の星団中の褐色矮星の数は、他の若い星団よりも多かった。他の若い星団の中では恒星の方が褐色矮星よりも4〜8倍も多く存在しているが、NGC 1333ではたった2倍ほどの数しかなかった。「これは、星の誕生現場の環境が関係しているかもしれません」とSONYCチームのカロリカ・ムジク氏は語っている。

星の誕生現場を調べている今回の研究成果は、木星とあまり変わらないような浮遊惑星も恒星と同じように生まれていることを示唆しており、惑星質量天体を作る方法は褐色矮星と通常の惑星形成理論と少なくとも2種類あるように見える。

褐色矮星や浮遊惑星については、まだわかっていることが少ないため、今後の研究が期待される。

注:「分光観測」 天体からの光を波長別にわけてスペクトルを求める観測を分光観測といい、天体に含まれる元素の種類や温度などがわかる。

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