NASAの次世代打ち上げシステム「SLS」とは

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【2011年9月21日 NASA

NASAがスペースシャトル後の有人探査や物資の輸送などを行う大型ロケットのデザインを発表した。これを使えば火星や小惑星などの有人探査も狙えるという。最初の試験打ち上げは2017年に行われる予定だ。


打ち上げ前のSLS

打ち上げ前のSLSのイメージ図。クリックで拡大(提供:NASA、以下同じ)

SLSの打ち上げイメージ

SLS打ち上げの様子のイメージ図。どことなく「サターンV」ロケットを彷彿とさせる姿だ。クリックで拡大

SLSの目標天体イメージ

SLSの目標天体のイメージ。月や火星、地球近傍の小惑星などが探査の対象となる。クリックで拡大

NASAは先日のスペースシャトル引退に合わせ、次世代の大型ロケットの開発を進めることを既に発表していたが、その設計概要が発表された。

新しいロケットは「SLS」(Space Launch System=宇宙打ち上げシステム)といい、オライオン多目的有人輸送船のほか、重要な物資や科学衛星を打ち上げる目的で設計されている。また、国際宇宙ステーション(ISS)へのアクセスのバックアップも担う。最初の試験打ち上げ目標は2017年だ。

SLSはスペースシャトルや「コンステレーション計画」の技術的成果を取り入れることで、開発費や運用費を抑える。液体水素と液体酸素の二液式推進剤を使用し、コアステージにはスペースシャトルのRS-25D/Eエンジン、上段にはJ-2Xエンジンを採用する。初期の試験段階では固体ロケットブースターを使用するが、その後はコストや性能を考慮しながら様々なブースターを試す。

初期の搭載能力は70tの計画で、将来的には130tまでの拡張を想定している。性能をアップグレードしていけるような仕様とすることで、価格が上昇する前の初期段階で予算を投入し、コスト効率の良い開発投資を狙う。また、既存技術の活用や、ミッションごとに必要とされる打ち上げ能力に応じてより効率のよい構成に変えられるモジュール式ロケットの使用などの工夫もある。

SLSは、アポロ計画などで使用された「サターンV」ロケット以来、初めての惑星間有人探査が可能なものとなっている。この大幅な打ち上げ能力向上によって、月や地球近傍小惑星、火星やさらにその遠くまで、人を運べるようになるのだ。

太陽系の歴史や、水や有機物、生命の源を探り、人類の活動の場を拡げる。これらの発見は我々自身の理解や、地球に対する理解、そし宇宙に対する理解を変えてくれるかもしれない。