クエーサーの最遠記録が更新

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【2011年7月1日 ヨーロッパ南天天文台

ヨーロッパ南天天文台のVLTが129億光年かなたのクエーサーを発見し、クエーサーの最遠記録が更新された。このクエーサーは非常に明るい天体であったため、スペクトルを得ることにも成功した。


クエーサーのイメージ図

クエーサーのイメージ図。クリックで拡大(提供:ESO)

宇宙で最も遠い天体は、世界中の研究者が競うようにして探している。今回、ヨーロッパの研究チームがこれまで見つかっている中で最も遠いクエーサーを発見した。

この発見は南米チリにあるVLT(超大型望遠鏡)と、米・ハワイ島マウナケア山のジェミニ北望遠鏡での観測によるものだ。見つかった天体ULAS J1120+0641の赤方偏移(光源の距離に応じて光の波長が長くなること)の度合いを表すz値(遠いものほどこの値が大きい)は7.1で、距離にするとおよそ129億光年離れた天体になる。

遠くのものを見ることは過去を見ることと同じであり、129億光年離れた天体からの光は129億年前に発せられたものだ。つまり、ビッグバンからわずか7億7000万年後にこのクエーサーが発した光を見ていることになる。

クエーサーは非常に明るい天体で、その正体は巨大なブラックホールだろうと言われている。現在の理論ではこのような巨大なブラックホールは、小さなブラックホールが合体してできると考えられている。

しかし、今回見つかったクエーサーはビッグバンからわずか7億7000万年しか経っていない時期のもので、質量は太陽の20億倍という非常に重たいものであった。このような短期間でこれほど大きな質量を持つ天体を作るのは現在の理論では難しく、研究者を悩ませている。

このクエーサーよりも遠い銀河(z=8.6)やガンマ線バースト天体(z=8.2)は既に見つかっているが、この天体はそれらと比較すると数百倍明るく、より詳細について調べることが可能だ。宇宙初期の様子を探る上で大きな手がかりとなることが期待される。