宇宙の最初期、131億光年先で起きたガンマ線バースト

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【2011年5月31日 NASA

NASAのガンマ線観測衛星「スウィフト」が2009年に検出したガンマ線バーストが、観測史上最遠の131億4000万光年先で起きたものと結論づけられた。もっとも遠い天体候補の1つとしても挙げることができる。


(ガンマ線バーストの残光の画像)

ジェミニ北望遠鏡が可視光と赤外線でとらえたガンマ線バーストの残光(画像中央の赤い点)。可視光はすべて水素ガスに吸収されてしまっているため、赤外線を表す赤色でしか見えていない。クリックで拡大(提供:Gemini Observatory/AURA/Andrew Levan (Univ. of Warwick, UK))

「スウィフト」がX線で撮像した「GRB 090429B」

ガンマ線バースト検出の107秒後、「スウィフト」がX線で撮像したGRB 090429B(提供:NASA/Swift/Stefan Immler)

「ガンマ線バースト」とは、宇宙の彼方で太陽の30倍もの大質量星が最期を迎える際に起きる、宇宙で最も明るい天体現象のことで、太陽が一生の間に放つエネルギーをわずか数秒間に解き放ってしまうという大爆発である。

その成り立ちはこうだ。核融合で輝き続けた大質量星が燃料を失い、中心核がつぶれてブラックホールができる。ブラックホールが吸い込む物質はほぼ光速に近いジェットとなって放たれ、星の外層の物質と衝突することでガンマ線放射が始まる。そして星の表面からガンマ線のビームが飛び出すと、ガンマ線バーストとして観測される。ジェットは星の表面を越えてなおも運動し続け、星の周囲に流出しているガスと衝突することで残光を生み出す。

ガンマ線バーストは一瞬の現象なので、距離を求めるためには、残光が消える前にすばやく位置を特定して観測しなければならない。

2009年4月29日、NASAのガンマ線観測衛星「スウィフト」がりょうけん座の方向で5秒間のガンマ線バーストを検知した。この現象は「GRB 090429B」と番号がふられ、米ハワイ・マウナケアにあるジェミニ北望遠鏡が3時間以内に残光の追跡観測を開始した。同じくマウナケアにあるUK赤外線望遠鏡による観測と合わせて、光源の距離に応じて光の波長が変化する赤方偏移の度合いを測定し、さらに2年にわたる分析調査の結果、これが観測史上最も遠い131億4000万光年先で起きたものだという確証を得た。

それまで最も遠かったものは、やはりスウィフトが2005年9月に検出した127.7億光年先のものだった。 実は、今回のGRB 090429B直前に検出された「GRB 090423」は130億400万光年先で新記録だったが、わずか6日でその座を開けわたすことになってしまったのだ。

このガンマ線バーストが起きた131億4000万年光年先とは、宇宙誕生から5億2000万年後の世界で、宇宙で最初に生まれた星々の中での現象だったものと見られる。