星の材料が逃げていく…噴き出す分子風から銀河成長過程を解明

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【2011年5月11日 ヨーロッパ宇宙機関

赤外線天文衛星「ハーシェル」が、銀河から激しく噴き出る分子ガスの風を観測した。星の材料を奪われた楕円銀河の成り立ちを解き明かす重要な観測成果となる。


(分子ガスの風を噴き出す銀河の想像図)

分子ガスの風を噴き出す銀河の想像図(提供:ESA/AOES Medialab)

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の赤外線天文衛星「ハーシェル」が、銀河から秒速1000km以上というすさまじいスピードで噴き出す分子ガスの風を観測した。星の材料となるこのような濃い分子ガスが流出する様子が複数の銀河ではっきりと観測されたのは初めてのことで、材料不足により銀河内での星生成が止まり、次の段階に進む過程を明らかにするうえで重要な観測成果となる。

観測研究を行った独・マックス・プランク宇宙物理学研究所のEckhard Sturm氏らは、ハーシェルを用いて50個の銀河を観測し、そのうちまず6個分のデータをまとめて今回の最初の発表とした。

観測されたガス風のうち、最も激しいものでは年間に太陽質量の1200倍ものガスが噴き出ていると推測されている。これは100万年〜1億年間の星生成に使われる量にも匹敵する量だという。

ガス風の起源として考えられるものは、若い星からの放射や放出、古い星の爆発による衝撃波がある。活動銀河核を持つ銀河から吹くものが特に激しく、これは銀河中心のブラックホールに物質が引きこまれる際のエネルギー放射によるもののようだ。小さい銀河同士が合体すると、それぞれの中心のブラックホールも合体して巨大化・活発化する。それによってガス風がさらに勢いを増して星生成が止まり、楕円銀河(星生成が止まり古い星ばかりの銀河)となるのかもしれない。

「ガス風が吹いている様子を観測することで、この現象が銀河の成長過程に大きく影響するという裏付けが初めて得られたのです。」(「ハーシェル」のプロジェクトサイエンティストGöran Pilbratt氏)

研究チームでは、観測した他の銀河の検証を引き続き行い楕円銀河の形成過程を検証していくとのことだ。