冥王星の大気中の一酸化炭素が10年間で倍増

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【2011年4月28日 イギリス王立天文学会

冥王星の大気に予想以上の一酸化炭素が含まれていることがわかった。2000年にも同様の観測を行っていたが、そのときと比較して一酸化炭素の量が2倍以上も増えており、太陽による熱の影響が原因ではないかと考えられている。


(冥王星の大気が広がっているイメージ図)

冥王星の大気が広がっているイメージ図。右に写っている天体は冥王星の衛星であるカロン(提供:P.A.S. Cruickshank)

冥王星は太陽から平均約60億km以上も離れたところにある、月よりも小さい天体である。過去20年ほどの観測結果によると、この遠方にある小さな天体にも非常に薄い大気があることがわかっていた。

今回、ハワイにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を用いて冥王星を観測したところ、一酸化炭素の存在を示す強いシグナルが得られた。これまでの研究では冥王星の大気の厚さはせいぜい数百kmと考えられてきたが、なんと3000km以上もの厚さを持つことがわかった。これは冥王星の衛星カロンまでの距離の約4分の1にもなる。

また、冥王星の大気は太陽から吹く風によって少しずつ剥ぎ取られているが、3000kmという厚さは大気を剥ぎ取るモデルの計算結果とよく一致していることもわかった。太陽風の影響で厚さが決定されている可能性がある。

さらに、スペインにあるIRAM望遠鏡で2000年に冥王星の大気を観測した時と比較して、一酸化炭素の量が倍増していることがわかった。この10年で一酸化炭素の量が倍増したのか、はっきりとしたことはわからないが、太陽までの距離の変化が関係していると考えられる。

冥王星は太陽系の惑星と比べていびつな楕円軌道上を、248年かけて1周している。1989年に冥王星は太陽に最も近づく点(近日点)を通過しており、そこで得た熱が冥王星表面にある物質を蒸発させ、大気の量を増やしたのかもしれない。

熱といっても、冥王星は太陽からとても離れたところに位置しているため、観測されたガスの温度は非常に低く、マイナス220度にもなる。また冥王星の大気は温室効果ガスであるメタンも含んでいるが、一酸化炭素が冥王星を冷やす効果を持っているため、この冷却効果が激しく効いてくると大気成分が凍ってしまい、地表面に降り積もることで大気が薄くなる可能性も指摘されている。

研究結果を発表したJane Greaves博士によれば、「このような冷たい天体で、どのような物理が働いて大気が変動しているのかという謎に対して、太陽熱というキーワードは大きなヒントとなっており、また地球大気の理解に対するよい比較になる」ということだ。

冥王星にはNASAの探査機「ニューホライズンズ」が向かっており、初めて探査機による探査が行われる予定となっている。Greaves博士をはじめとした研究グループは、探査機が本格的に観測を始める2015年ごろまで冥王星の大気を観測していきたいとのことだ。