NASAの火星探査機MRO、到着から5年を超える

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【2011年3月17日 NASA

NASAの火星探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)が火星に到着してから5年が経った。当初の探査計画期間を大幅に超えているが、現在もデータを取得し続けており、火星の理解に対する大きな貢献を続けている。


(MROが取得したガリーの画像)

MROが取得した火星のガリー(水が流れた後のような溝)の様子。クリックで拡大(提供:NASA)

MROは2005年8月に打ち上げられ、7ヶ月後の2006年3月10日に火星の軌道に到着した。当初2年間の探査計画であったが、その後2つのエクストラミッションを与えられ、これまでに7万枚もの画像を含む131テラバイトを超えるデータを地球に送ってきている。これは惑星探査機が地球に送ってきたデータとしては世界でもっとも多いデータ量だ。

MROは1ピクセルあたり29.7cmという非常に高い解像度のカメラを生かして火星表面の詳細な様子を捉えてきた。その中には、同じくNASAの火星探査機であるフェニックスが火星の地表にいるところを撮影したものや、火星でたびたび発生している砂嵐の様子を捉えたものもある。

火星には地球のようなプレート運動が存在しないため、非常に古い時代の地層が残っている。MROはこのミッションで、3つの大きく異なる年代区分について明らかにしてきた。

もっとも古いものはノアキアン時代(Noachian epoch)と呼ばれ、およそ45億年前から35億年前にできたと考えられている。ここには非常に多くのクレーターの他、形成に水が関わったと思われる鉱物も多く見つかっている。タルシス三山として知られる火山もこの頃にできたようだ。

その次に来るのはヘスフェリアン時代(Hesperian epoch)と呼ばれ、およそ35億年前から29-33億年前の間に形成されたと考えられている。この時代には溶岩台地として知られている場所が形成されたほか、水が高緯度域と低緯度域で循環し、地球の氷河期と間氷期のような定期的な変化を起こしていたと考えられている。

そして29-33億年前から現在まで続く時代をアマゾニアン時代(Amazonian epoch)と呼んでいる。この時代も惑星規模の気候変動が起きていると考えられており、砂嵐の発生や凍った二酸化炭素(ドライアイス)の循環などが現在でも起きていることが知られている。

火星での「1年」(太陽の周りを一周する時間)は地球の2年に相当するため、探査機は現在火星上での「3年目」を過ごしていることになる。探査機の状況は現在も良好で、2010年から始まったエクストラミッションを遂行中である。