中性子星が超流動体の核を持つ証拠を発見

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【2011年2月24日 Chandra X-ray Observatory

チャンドラX線天文衛星の観測から、超新星残骸「カシオペヤ座A」にある中性子星の温度が急激に低下していることがわかった。中性子星の中心核が超流動体であるという初めての証拠であり、高密度状態における核相互作用への理解を深める一歩となる。


(超新星残骸カシオペヤ座Aの画像)

チャンドラのX線データ(赤・緑)とハッブル宇宙望遠鏡の可視光データ(黄)を合成したカシオペヤ座Aの画像。中心に中性子星が見える。拡大した想像図には、中性子星の外殻と中心核、ニュートリノの放出(青)が描かれている。(提供:X-ray: NASA/CXC/xx; Optical: NASA/STScI; Illustration: NASA/CXC/M.Weiss)

地球から11,000光年先にある「カシオペヤ座A」は、超新星爆発から330年経った超新星残骸だ。大きく広がった残骸の中心には、爆発した大質量星の名残である超高密度の中性子星(注1)がある。

NASAのX線天文衛星「チャンドラ」の観測により、この中性子星の温度が10年間で4%も低下していることがわかった。この温度低下は100年前から続いており、星の中心核で中性子の超流動化(注2)が起こっていることによるものと思われる。中性子星の核に超流動体の物質が存在することが、初めて裏付けられた。

また、地球上の物質は絶対零度に近い極低温で超流動状態になるが、中性子星の内部物質が超流動状態になる上限温度は摂氏5億〜10億度弱と非常に高いことも判明した。星の広い範囲で中性子の超流動化が起こっており、また、急激な温度低下から、残された陽子の超流動化による超伝導体生成が早い段階から始まっていたとみられる(注3)。この温度低下はあと数十年後には緩やかになると予測されている。

この発見により、超高密度状態における核力(陽子や中性子を結合し原子核を形成する力)のふるまいや、中性子星におけるパルス(注4)の乱れ、歳差(注5)や磁場の形成などへの理解が進むと期待される。

注1:「中性子星」 太陽の8〜30倍程度の質量を持つ星が超新星爆発を起こしたあとにできる天体。スプーン1杯で60億トンという超高密度のため、陽子や電子が合体して中性子になりぎゅうぎゅうに詰め込まれている。

注2:「超流動」 物質が、容器の壁をつたって上方へ流れたり、密閉した隙間から流れ出たりする状態。

注3:「陽子の超流動体」 陽子のように電気を帯びた粒子の超流動体は、電気抵抗ゼロの「超伝導体」となる。

注4:「中性子星のパルス」 中性子星は高速で自転しているため、その電磁波放射がパルス信号のように断続的に地球から観測される。

注5:「歳差」 天体の自転軸がぶれて回転する運動。