おおぐま座に明るい矮新星 10等台まで増光

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年2月10日 VSOLJニュース(265)】

イギリスのJ・シアーズさんが2月7日、スローンデジタルスカイサーベイのデータから、10等にまで増光したおおぐま座の矮新星を発見した。矮新星としてはかなり明るい部類に入る。


VSOLJニュースより(265)

著者:大島誠人さん(京大理)

今年は厳しい寒さの続く冬となっておりますが、そんな寒い冬の夜も更けるとともに春の星座が昇ってきます。春の代表的な星座であるおおぐま座は多数の矮新星が見つかることでも知られていますが、この度新たに一つの明るい矮新星がおおぐま座に発見されました。

スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)はサーベイ観測の一環として分光観測をしており、それによって数多くの激変星と思われる天体を検出し、リストアップしています。これらの天体の中には、まだ増光がとらえられたことがない矮新星が多数含まれている可能性が高いため、多くの観測者がこのリストを元に新たな天体が増光を起こしていないかという日々のモニター観測を行っています。今回の新たな矮新星は、その中の一つで、普段は17.5等程度の星です。

発見者はJ・シアーズさん(イギリス)です。2011年2月7.919日(世界時)に、この天体が10.4等にまで増光しているところを眼視観測によってとらえました。この発見をうけて世界各地にの観測者によって確認され、増光天体に間違いないことが判明しました。この天体は通常は17.5等前後ですから、増光幅は7等程度になります。これは激変星としてはかなり大きな値です。また、この天体が激変星であると疑われるようになってから一度も増光は発見されていないことなどから、増光がかなりまれな天体と考えられ、や座WZ型矮新星(下記〈関連ニュース〉参照)の可能性もあります。精測位置と最近の観測は、以下のとおりです。

  赤経  13時39分41.12秒
  赤緯 +48度47分27.5 秒 (2000年分点)
  おおぐま座の矮新星周辺の星図
日時(世界時)等級観測者(敬称略)
2010/04/06.17216.5Eddy Muyllaert(ベルギー)
2010/04/11.07417.2Eddy Muyllaert
2010/07/11.08717.2Eddy Muyllaert
2011/02/07.91910.4Jeremy Shears(イギリス)※発見
2011/02/07.94010.416Ian Miller(イギリス)
2011/02/07.95810.5Gary Poyner(イギリス)
2011/02/08.01710.1Patrick Schmeer(ドイツ)
2011/02/08.03510.4Gary Poyner
2011/02/08.91910.3Eddy Muyllaert

10等という明るさは矮新星、とくに新しく発見される矮新星の中ではかなり明るい部類に入るもので、小さな望遠鏡でもその増光している姿を見ることができます。おそらく数年に一度、あるいはそれ以下しかその姿を通常の望遠鏡で眺めることはできないでしょうから、この機会に一度、その稀にしか目にすることのできない姿を眺めてみてはいかがでしょうか。

今回のような発見の元となった増光モニターは、その性質上ほとんどが「今日も見えなかった」の繰り返しの地味な観測です。しかし、そのような目立たない観測の積み重ねがこの度の新矮新星の発見につながったといえるでしょう。


おおぐま座の矮新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」(メニュー「ツール」→「データ更新」)を行ってください。

また、新しいデータや番組をオンラインで入手できる「コンテンツ・ライブラリ」(メニュー「コンテンツ」→「コンテンツライブラリ」)では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルもダウンロードできます。あわせてお楽しみください。