宇宙のものさしはあてにならない? ケフェイド変光星の物質放出の証拠

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【2011年1月20日 NASA JPL

アメリカの研究チームの調査により、天体の距離を測る基準になる「ケフェウス座δ型変光星」が大量の物質を恒星風として放出しているという直接的な裏付けが初めて得られた。天体の明るさにも影響するという物質放出のメカニズムを明らかにすることで、より正確な測距が期待される。


ケフェウス座δ星とその物質放出

スピッツァーでとらえたケフェウス座δ星とその物質放出のようす。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Iowa State)

ケフェウス座δ星の位置

ケフェウス座δ星(3.5等級)の位置。1月の夜8時ごろ、北西方向に見える。星図はステラナビゲータで作成。クリックで拡大

米・アイオワ州立大学のMassimo Marengo氏らの研究チームが、赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーを使用してケフェウス座δ(デルタ)星の観測を行ったところ、太陽風の100万倍もの勢いで物質を放出し、縮んでいることが示された。

ケフェウス座δ星は、「ケフェイド」(ケフェウス座δ型変光星:「セファイド」とも呼ばれる)という種類の天体で、その名前の由来となった星でもある。ケフェウス座δ星のほか30個近くのケフェイドを追跡調査したところ、最大で4分の1の天体が同じように物質を放出していることがわかった。自身が放出する物質に覆われて星の明るさが影響を受けるという可能性はこれまでも示唆されていたが、今回の研究結果はその初めての直接的な裏付けとなる。

ケフェイドは変光周期と実際の明るさに一定の関連があり(注)、近傍から遠方までのスケールに応じた異なる手法で段階的に天体までの距離を測る、いわゆる「宇宙の距離はしご」の重要な一段を成す標準光源だ。「宇宙の距離はしご」は、まず近くの天体の距離を求め、それを元にしてさらに遠くの天体の距離を計算していくことで成り立つため、1箇所が揺らぐと全体への影響は大きい。

研究者達は、ケフェイドのより高精度な観測を行うことで「はしご」がより強固に補強されていくことを期待している。

(注)変光周期から割り出せる実際の明るさと見かけの明るさを比べると、どのくらい遠くにあるかがわかる。