急増光していくミラを見よう

【2010年9月9日 日本変光星研究会】

くじら座の長周期変光星ミラが急速に明るくなろうとしている。現在は8等前後だが、10月10日ごろには2〜3等まで明るくなりそうだ。この機会に変光星観測の面白さをぜひ体験してみよう。


文:滋賀県ダイニックアストロパーク天究館 高橋進さん

(ミラの光度曲線の予想)

ミラの光度曲線の予想。クリックで拡大(提供:ダイニックアストロパーク天究館 高橋進氏)

くじら座のミラは、およそ330日の周期で3等から9等の間を変化する長周期脈動変光星です。脈動により表面の温度が変わるのが変光の原因で、収縮して密度が高くなると温度も上がり明るくなります。逆に膨張すると温度が下がり暗くなりますが、温度が下がると恒星大気に酸化チタンの雲が広がり、これによってさらに暗くなっていくといわれています(周期や極大光度・極小光度はその時によって多少変わります。カタログなどでは、平均周期とこれまでに観測されたもっとも明るい等級ともっとも暗い等級が書いてあります)。

今年のミラは6月末頃に極小になったと思われています。この時期は太陽がくじら座の近くにあったために正確にはわかりませんが、およそ9等程度の極小だったのではないかと思われます。その後はしばらく暗い状態が続いていましたが、9月になって徐々に明るさを取り戻しつつあり、9月4日現在ではおよそ8.1等になっています。今年の極大予想は10月10日頃ですので、9月中旬から下旬に急激に明るくなっていくことが予想されます。この増光スピードは1日に+0.2等にもおよぶかと思われます。たとえば、たった4〜5日でベガ(0.0等)とアルタイル(0.8等)ほどの光度差で変わるわけで、毎日見ていても日ごとに変わっていく様子がわかるくらいです。

しかも今年のミラは極小光度が比較的明るいと思われることから、極大光度も明るくなることが期待されています。極大時期は肉眼でもはっきりと見ることができますので、誰でも気軽に観測することができます。光度の観測はミラの周囲の星の等級が記入された星図(変光星図といいます)を用意して、明るさがミラに近い星(比較星といいます)と見比べて明るさを目測します。ぜひこの機会にミラの光度目測にチャレンジしてみてください。

※ミラの変光星図は日本変光星研究会のウェブサイトからも入手できます(下記「関連リンク」参照)。