宇宙で最初に誕生した超巨大ブラックホールを再現

【2010年8月31日 Ohio State University

ビッグバンからたった10億年ほどしか経っていない宇宙で起きた巨大な銀河同士の衝突・合体によって、超巨大ブラックホールが誕生したことが、コンピュータ・シミュレーションで示された。


(超巨大ブラックホール形成のコンピュータ・シミュレーションのハイライトシーンの画像)

超巨大ブラックホール形成のコンピュータ・シミュレーションのハイライトシーンを集めたもの。各画像中、左上の数字は時間を表す(例:0.10 Gyr=1億年目)。クリックで拡大(提供:Ohio State University)

この宇宙の年齢は約140億歳と考えられている。米・オハイオ州立大学の研究者Stelios Kazantzidis氏らの研究チームがコンピュータ・シミュレーションを行い、ビッグバンから最初の数十億年間における銀河とブラックホールの進化を再現した。

シミュレーションでは、大質量星ばかりが存在する原始銀河同士の衝突と合体が再現された。注目すべきは、これまでのシミュレーションで見分けられる構造は最小でも差し渡し約300光年ほどとかなり大きかったが、今回のシミュレーションはその100倍高い解像度を実現し、合体した銀河の中心部分の詳細を1光年以下のスケールで明らかにすることが可能となった点である。

その結果、大きな原始銀河同士の衝突・合体によって、宇宙で一番最初の超巨大ブラックホールが誕生した。つまり、銀河と超巨大ブラックホールという大きな構造が、宇宙の歴史におけるごく初期のうちにあまり時間を要さず、すぐに形成されたことになる。これは、小さな天体が重力の影響で集まって徐々に大きくなっていき、やがて大きな天体や構造が形成されるという、銀河の進化にも当てはめられてきた階層的な進化プロセスとは逆である。

2つの銀河の中心にあるちりとガスが集まって核となる高密度の円盤ができ、その円盤が不安定となってちりとガスが再収縮してさらに高密度の雲ができ、そこから超巨大ブラックホールが誕生したようだ。

Kazantzidis氏は、「標準的な考え方をもとにすれば、銀河の特徴とブラックホールの質量には関係があると言えます。なぜなら、平行して互いに成長すると考えられているからです。しかし、今後この考え方は改められるべきでしょう。わたしたちのモデル計算では、ブラックホールは銀河に比べてはるかに急速に成長しました。つまり、銀河の成長にブラックホールはまったく制限を受けず、逆に銀河は、ブラックホールの成長によって調節されているかもしれない可能性があるわけです」と説明している。

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