眠ったまま目覚めず、火星探査車スピリットから応答なし

【2010年8月5日 NASA

今年3月から通信が途絶え、冬眠モードに入っていたとみられる火星探査車スピリット。復活が期待された7月末になっても応答がなく、NASAの運用チームにより通信回復に向けた懸命の努力が続けられている。


(スピリットがとらえた火星の画像)

2009年5月以来、動けなくなっていた探査車スピリット。この危機から抜け出せるか。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech )

今年の3月末以降、火星探査車スピリットは、火星で4度目となる冬を迎えて冬眠モードに入っていたとみられている。過去3度の冬越えの間は、地球との交信を週に1、2回行いながら、太陽光の当たる斜面に停車してその光から電力を得てヒーターを使い、探査車の内部は摂氏マイナス40度以上に保たれていた。

しかし今回の冬越えではヒーターがほとんど入らないため、内部温度は摂氏マイナス55度というこれまでにない低温になっているようだ。これは、昨年5月に車体が砂地にはまってしまい、移動はおろか、太陽光発電のための姿勢をとることもできなくなったため、冬を越すのに必要なオペレーションが不可能となっていたからである。

冬眠モードに入ったスピリットは、今年の7月末頃までにはある程度の充電を済ませ、目覚める可能性があると思われていた。NASAはスピリットとの交信を試みたが、これまでに何の通信も届いていない。

双子の探査車スピリットとオポチュニティのプロジェクト・マネージャーをつとめるNASA ジェット推進研究所のJohn Callas氏は「スピリットからの通信を待つ代わりに、逆にこちらから、ビープ音の送信を指示するコマンドを送っています。探査車が目覚めて、わたしたちからの通信を受信すれば、ビープ音を送ってくるでしょう」と話している。

運用チームでは現在のところ、充電がじゅうぶん行われて再起動できるまでには9月後半から10月半ば頃までかかると想定している。スピリットが目覚めれば、搭載されている観測機器や電子機器などすべてのチェックが行われるのだが、その動作が始まるのは10月半ばよりもっと後のことかもしれない。スピリットのいる火星の南半球は、2011年3月に夏至を迎え、日射量がピークとなる。その時になっても復活しなければ、2度と復活の見込みはない。

今後の見通しについて、NASAの火星探査計画の責任者Doug McCuistion氏は、次のように話している「もしも、わたしたちの愛する探査車から我が家へ連絡がくれば、それはまさに奇跡と呼ぶべきでしょう。なにしろ、このような厳しい環境にさらされたことがなく、未知の領域だからです」。

また、両探査車の主任研究員をつとめる米・コーネル大学のSteve Squyres氏は「スピリット、オポチュニティとともに、まだまだ探査をしたいのです。わたしたちは、再びスピリットの声を聞けるのを諦めません」と話している。