「イカロス」、太陽光圧を利用した液晶デバイスによる姿勢制御に成功

【2010年7月23日 JAXA

小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」は、7月13日(日本標準時、以下同様)に姿勢制御デバイス(液晶デバイス)による姿勢制御実験を行った。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、実験で得られたデータの確認・解析の結果から、「イカロス」が太陽光圧のみを利用したセイルの姿勢制御に成功したと発表した。


(イカロス膜面上の液晶デバイスの搭載位置を示した図)

イカロス膜面上の液晶デバイスの搭載位置。クリックで拡大(提供:JAXA、以下同様)

(液晶デバイスによる姿勢制御のイメージ図)

液晶デバイスによる姿勢制御のイメージ。クリックで拡大

(スピン周期に同期したデバイスのON/OFF制御のイメージ図)

スピン周期に同期したデバイスのON/OFF制御のイメージ。クリックで拡大

「イカロス」には、姿勢制御デバイス(液晶デバイス)と呼ばれる工学実験機器が搭載されている。通電することで表面の反射特性が変わる薄膜デバイスで、燃料を用いずに太陽光圧のみを利用してセイルの姿勢制御を行うために使用される機器だ。太陽光圧を用いて姿勢制御を行う方法は、世界に先駆けてJAXAが独創的に開発してきたものである。

「イカロス」のようなスピン型のソーラーセイルにとって、柔軟性のある大型の膜面に対して振動を発生させないように小さい姿勢制御トルク(※)を連続的に発生させる技術や、スピンする膜面の持つ大きな角運動量の方向(姿勢)を燃料を消費せずに制御する技術は、ひじょうに重要となる。

JAXAは、引き続き「イカロス」の姿勢制御実験を実施して性能の詳細な評価を行う。そして、ソーラーセイルを用いた長期・遠距離航行を可能にする技術として、太陽光圧を利用した姿勢制御技術の研究を進める。

※トルク:回転軸のまわりに物体を回転させようとする力の働き。物体を回転させる作用は、力の大きさと回転軸の中心から力の作用点までの距離が関係しており、モーメントの大きさは(力)×(距離)で表わされる。