未だ謎のまま、Ia型の超新星爆発の起源に迫る

【2010年7月20日 CfA

宇宙の加速膨張やダークエネルギーの存在は、宇宙の標準光源として利用されている「Ia型超新星」の観測によって示唆されており、同天体は宇宙論にとって重要な天体である。そのIa型の超新星爆発が何によって引き起こされているのかに迫ろうとする研究成果が発表された。


(銀河M101の画像)

銀河M101。クリックで拡大(提供:NASA/ESA)

(銀河M101の白黒反転画像(四角内が軟X線源))

銀河M101の白黒反転画像。四角内が軟X線源。クリックで拡大(提供:R. Di Stefano (CfA))

星が超新星として爆発すると、その輝きはとても明るく、はるか遠方にあっても観測することができる。そのうちIa型と呼ばれる種類の超新星は、光度の変化のようすから本来の明るさを推定することができ、見かけの明るさとの比較から、その超新星(が存在する銀河)までの距離を推測できる。この特徴を利用して、ダークエネルギーの存在や宇宙の加速膨張が明らかにされ、宇宙に関するわたしたちの理解も大きく変わってきた。しかし、肝心のIa型の起源、つまり爆発に至る前のプロセスなどは、よくわかっていないのである。

Ia型の爆発を起こす天体は、白色矮星であることが強く示唆されている。基本的に安定した天体である白色矮星が爆発を起こすには、質量が限界に達する必要があり、そのプロセスについては、主に2つのシナリオが知られている。

1つ目は、白色矮星に巨星の伴星が存在していて、巨星のガスを白色矮星が飲み込むというもの(以下「降着型」とする)。もう1つは、2つの白色矮星同士のペアが衝突して合体するというもの(以下「合体型」とする)である。両者のうち、どちらが実際の現象である(より頻繁に起きている)のか、その答えを出すために研究者は連星系を探して研究する。

銀河における超新星の平均的な発生率をもとに、1つの銀河に超新星になる前の白色矮星がどれくらい存在するのかを計算することができるが、その結果からは、予想に反して超新星の前段階にある天体がほとんど存在しないに等しいという結果が示されていた。

また、伴星から物質が降り積もっている白色矮星を見つけるには、星の表面にガスがぶつかって起きる核融合で発せられる特殊なX線(軟X線:比較的低いエネルギーのX線)を検出する方法がある。典型的な銀河には数百個もの軟X線源が存在しているはずと考えられているのだが、少ししか見つかっていない。

この結果を受けて、多くの銀河でIa型超新星爆発を起こしているのは合体型である可能性が示唆されることになった。ただし、この結論はあくまで「ガスの降着によって核融合が起きている天体は軟X線源として観測される」という前提に基づいている。

そこで、米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのRosanne Di Stefano氏は考え方を一歩先に進め、連星の合体によって引き起こされる超新星爆発も、合体に先行して物質の降着による核融合が起きるのかもしれないという点を指摘したうえで、さらに次のように述べている。

白色矮星は星が老いることで形成されるが、年のとり方も星によって異なる。2つの白色矮星がひじょうに近い距離にある連星系で、最初に形成された(年老いた方の)白色惑星が、よりゆっくりと年老いていく(若い方の)伴星から質量を得て、核融合が起きるかもしれない。もし、そのような白色矮星のペアでX線が生成されると、現在知られている個数より百倍も多く軟X線源を発見できるはずだというのだ。

つまり、降着型と合体型いずれのシナリオでも、降着による核融合という現象が関わっているはずであり、予測に反し軟X線源がほんのわずかしか観測されたなかったという事実は、降着型と合体型の両方をIa型超新星の前段階にある天体として除外する必要性を示している可能性さえある。

それに対し、Di Stefano氏は、白色矮星からの光がわたしたちのもとに届くまでに波長が引き伸ばされてしまうために、X線が検出されないのではないかという考え方を提案している。または、白色矮星の周囲の物質によってX線が吸収されているのかもしれないし、あるいは降着が起きている白色矮星からはエネルギーのほとんどがX線以外の波長で放射されているという可能性も考えられる。この考え方が正しければ、なかなか見つけられないIa型超新星の前段階にある天体を探すためには、観測の方法を変える必要があるのだろう。